第4話 入学試験


 上を向いて話しかけてくれた女性を見る。


(エ、エルフだ......)


 スタイルなどはティアに似ているが、ティアとはまた違う可愛さがにじみ出ていた。例えるなら可愛い系だが、この女性は美人系であった。

 

「あ、はい。ありがとうございます......」

「それよりもどうかしましたか?」

「いえ、少し気落ちしていまして」

「あなたほどの実力で気落ちする理由も分かりませんけど?」


(え?)


 その言葉に俺は驚いた。なんで俺の実力が分かるんだ? ふと頭によぎった。


(もしかしてこの人が?)


 世間的に見たら魔力ゼロの俺だが、この人は実力が分かっている風に言ってきた。だとしたらティアに言われていた通り、精霊と契約している人がこの人なのかもしれないと思った。その時、ティアがこの場に現れた。


「久しぶりね! シルフ」


 すると、女性の隣にイケメンな男性が現れた。


「ティターニア様、お久しぶりです」


 俺とこの女性は目を見開いてお互い顔を見合わせる。


「え? もしかして精霊と契約しているの?」

「あ、うん。君も?」

「うん。初めて精霊と契約している人を見たわ」


 俺もそれには同意見であったため、頷いた。今まで精霊と契約した人なんて見たことがなかった。それなのに今、目の前に契約している人がいるともなると驚きもする。


 この前まで精霊事態の存在すら、おとぎ話で出てくる存在だと思っていたのに、こんなに早く同僚を見つけるとは......。


「私はミシェル・リーリカ! よろしくね」

「リアムです。よろしくお願いいたします」


 少し疑問そうな顔をしながら次の話に入った。


「私と契約しているのはシルフなの。あなたは?」

「俺が契約しているのはティターニアです」

「え? ティターニアって......」


 するとティアがシルフさんと話している途中で、こちらにやってきて自慢げに言った。


「精霊王よ! シルフは私の友達だからリアムも仲良くしてあげてね」

「はい。シルフさんよろしくお願いいたします」

「あぁ。それにしてもティターニア様と契約できる存在がいるなんてな」


(??)


 別に俺じゃなくても契約はできたんじゃないか? それこそミシェルさんだって契約できたはずだけど、そんなに驚くことなのか? 


 ミシェルさんは、固まった状態からやっと治ってティアに話しかけた。


「お初にお目にかかります。ミシェルと言います。今後よろしくお願いいたします」

「うん! リアムと仲良くしてあげてね?」

「はい!」

「じゃあ私とシルフで少し話したいことがあるから、二人は試験会場にでも行ってて。試験が始まるときには、シルフと一緒に戻るから」


 俺とミルシェさんは頷いて、試験会場に向かった。お互い何を話せばいいのかわからず、無言状態がつづいたが、その均衡をミルシェさんが崩した。


「リアムくんは私が怖くないの?」

「え? なんでですか?」

「だって私はエルフじゃないじゃない? 人族ってエルフを軽蔑するって聞いていたから」


 そう言われて少し納得してしまった。元実家でもそのような教育を受けて来ていた。それもエルフは魔力が無いから軽蔑する傾向があった。でもあの時はそんなことより、より魔法の知識を身に付けたかったら軽蔑とか考えたこともなかった。


「別に思いませんよ」

「そっか。じゃあ私と友達になってくれる?」

「え? 逆に良いんですか?」


 すると満面の笑みで言ってくる。


「うん! よろしくねリアム!」

「こちらこそよろしくね、ミシェル」


 その後、お互い軽い雑談をして試験会場に入った。


(多いな)


 思っていた数倍人が居て驚く。そしてこちらを険悪な眼で多くの人が見てきて、先程言われていたことがやっと実感してくる。


(やっぱり差別ってあるんだな......)


 同じ人族として恥ずかしいと思ってしまった。そこから数分が経って試験官が入って来て言われる。


「今から試験を受けてもらう。受験番号が書かれている各教室に行ってくれ」


 試験を受ける全員が頷いて、続々と教室に向かった。俺とミシェルは受験番号が近かったので、同じ教室入って試験を受けた。


 最初は筆記試験。今まで勉強してきたことが役に立ったため、案外早く試験を終えることができた。筆記試験が終わるとミルシェは少し雲息の怪しい顔をしながら話しかけてくる。


「リアムはどうだった?」

「まあこれで落とされることはないかな?」

「そっか」


 すると周りから雑音が聞こえた。


「なんでエルフなんて劣等種が居るんだよ」

「な! でも試験で落ちるだろ!」


(クソが)


 そう思いながらミルシェと実技の会場に向かった。実技の試験は簡単で、自分が使える魔法で三十メートル離れている的に当てること。


 一人目の受験者が受ける時、試験官に水晶をだして魔力適性を測り始めた。


(やばい......)


「リアムどうしたの?」

「いや、なんでもないよ......」

「そうならいいけど」


 そしてついに俺の番がやってきた。試験官に言われた通り水晶に手を当てると案の定、真っ白であった。すると試験官が怒鳴り散らかしてきた。


「ふざけているのか! 魔法が使えない奴が入学していいところじゃないんだよ!」

「でも......」


 試験を受けに来ていた人たち全員が俺を笑った。それを見て、ミルシェが何かを言おうとしたが、それも虚しく試験官が続けて言う。


「屁理屈を言うな! だったら魔法を使ってみろ!」

「わかりました」


 俺は、一旦深呼吸をして練習通り、ティアの力を使って火玉ファイアーボールを放った。すると的である岩が崩れ落ちた。


 それを見た試験官やミシェルを含む全員が、こちらを見てきた。


(成功でいいんだよな?)

 

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