第2話 契約
(何が起きたんだ?)
目の前で何が起きたのか理解ができなかった。なんせ俺は魔力が無いはずだ。それなのに、なんで光を発せられたのかわからなかった......。
「ありがと!」
声のする方向を向くと、先程の生き物が徐々に近づいてくるのが分かった。
「う、うん。それよりも大丈夫?」
先程まで、涙を流していたのとは一変して、満面の笑みで答えてきた。
「えぇ! あなたのおかげで精霊界にやっと戻れるわ!」
「え? 精霊界?」
聞き間違いじゃないよな? 今、精霊界って言ったよね? 精霊って、あの精霊だよね?
「えぇ! こう見えても私、精霊王なんだよ!」
「なんでこんな場所に......」
「それがね。今まで信用してきた仲間の一人に騙されちゃってさ......」
それを聞いて、俺は一瞬同じ境遇だと思ってしまった。本当は同じ境遇なんかじゃないのはわかっている。俺は才能がなくて追放された身だけど、精霊王様は何の理由も無く騙されたんだと思う。
それでも、同じ境遇だと思ってしまう。なんせ、お互いが信用していた人から追い出されて、一人でいたのだから。
「そっか......。それよりも精霊王様が俺なんかと契約してもよかったの? 俺、魔力無いけど......」
下を向きながら言うと、精霊王様が言った。
「だから言っているじゃない! あなたは普通の人より、数倍魔力を持っているわよ? そうじゃなければ私と契約なんてできないんだから!」
「じゃあなんで俺は魔力ゼロって言われたんだよ!」
淡い期待なんていらないと思い、つい怒鳴ってしまった。
「それはわからないけど......。でもあなたは魔力を持っているわ! それだけは私が保証する!」
「......」
「信じていないでしょ? だったら私と契約したんだから、私の力を使ってみればいいじゃない! 契約しても、魔力が無くちゃ精霊の加護を使うことなんてできないんだから!」
「わかったよ......」
俺は渋々、精霊王様に言われた言葉を発した。
「Б℄€¶Φ」
すると、あたり一面が光だした。
「え?」
何が起こったのか理解ができなかった。
「だから言ったでしょ? あなたは魔力を持っているの!」
「......」
「それよりも、お互い契約したんだし自己紹介しましょ! 私はティターニア! よろしくね」
「俺は、リアム・ス......。リアム、よろしく」
一瞬、実家の名前を言おうとしてしまったが、追放されたことが頭によぎり、言い直した。
「リアムね! じゃあ私は精霊界に戻るけど、手についている紋章に魔力を込めてくれればすぐに駆け付けるから!」
すぐさま手の甲を見ると、円形になっている紋章が浮かび上がっていた。
(何だこれは? それよりも......)
「ティターニア様、魔力の込め方がわからないです」
「手の甲に集中すれば大丈夫だから! それとティターニア様じゃなくて、ティアでいいからね! 後、敬語も無し! 私とリアムは契約している以上、対等な立場なんだから!」
「あ、あぁ。じゃあ明日にでもゆっくりと話したいから呼ぶよ」
「えぇ。じゃあまた明日ね」
ティアはそう言うと、この場から消え去ってしまった。
(それにしても何だったんだ?)
さっきまでの出来事が幻覚のように感じた。なんせ、目の前にティアはいない。それなのに、今までの出来事がありましたよなんて信じられなかった。
でも嘘のようで現実に起こった出来事。その証拠に手の甲には契約した証として、よくわからない紋章が刻まれていた。
「まあ、まずは宿屋にでも泊るか」
野宿で一日を過ごすわけにもいかないので、なけなしのお金で宿屋に泊まった。
翌日。ティアに言われた通り、手の甲に意識を集中させた。すると目の前に、一人の女性が現れた。
(え? 誰?)
てっきり誰も出てこないか、手のひらサイズのティアが出てくると思っていた。それなのに今、目の前にいるのは俺より少し小さな女性。
男性の誰もが見た瞬間、美人、可愛いと言ってしまうほどの美貌の女性。それに胸は大きく、スタイルが良い。そんな人、俺の知り合いにはいなかった。
「えっと、どちら様ですか?」
「もう忘れちゃったの? ティアだよ!」
「え、えぇ~~~~~~~~~~」
つい、怒鳴ってしまった。すると周りにいる数人の人がこちらを見てきた。
「いきなり大きな声を出さないでよ!」
「ごめん」
「まあ驚くのも無理ないけどさ!」
「それよりも、昨日の姿と今日の姿、違いすぎない?」
そう、昨日は小さくて可愛らしい印象であったが、今は心がざわつく程の美少女に変わっていたのだから。
「あれは、まだ契約していなかったからであって、今はリアムと契約したから人間の姿になったんだよ?」
「は?」
「は? じゃないって!」
俺と契約したから人間の姿になった? ってそれよりも、一番聞かなくちゃいけないことを忘れていた。
「ごめん。それよりも精霊って本当?」
「うん。信じてないでしょ?」
俺は、無言でうなずくと、ティアは近くにいた人に近づいて話しかける。だけど、その人はティアのことを無視して歩き去って行った。それこそ、ティアのことを見えていないように。
「今見せたように、私のことは他の人には見えないの」
「そ、そうなんだ」
だとしたら、俺がさっき大声を上げた時、一人で叫んでる変人って思われたってことだよな......。そう思った瞬間、一気に顔が赤くなった。
「でもリアムとよりリンクしたら、人にも見えるようになるし、今でも少しだったら他の人に見せることはできるよ。やってみようか?」
「いや、遠慮しておくよ」
さっき変人として周りから注目を集めてしまったのに、ティアまで見えるようになったらどうなることか......。そう思っていた時、ティアは、先程までの雰囲気とは一変して、真剣な顔をして俺に言ってきた。
「じゃあ、今から契約の内容を説明するね。後、私がやらなくちゃいけないことも。それは、リアムにも関わってくることだから」
「わかった」
すると、ティアはゆっくりと話始めた。
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