実家を追放された魔力ゼロの魔法使い〜実は古代魔法【精霊王の加護】を使うことができるので、学園で無双します!兄さん、俺に決闘を挑んだこと後悔しますよ?

煙雨

追放から模擬戦終了まで

第1話 勘当されてから


「お前はこの家の汚点だ! 早く出て行け」

 

 魔力適性で無とわかった当日、父さんから俺---リアム・スミスに向かって言った。


「ま、待ってください! もしかしたら魔力装置のミスかもしれません。もう一度チャンスを......」

「笑わせるなよリアム。兄であるマットは魔力ありとして、言い渡されたのにお前は何だ? 魔力無し? 代々賢者として国に仕えてきた歴史をお前は汚したんだ。そんな奴にチャンスなんて与えるはずがないだろ」

「......」


  その時、隣の部屋から双子の兄であるマット兄さんが出てきて、言われた。


「自分の立場をわきまえて発言しろよ? お前はもうスミス家の人間じゃないんだよ。ただのリアムってわけ。そんな奴の話を父さんが聞くとでも思っているのか?」

「で、でも......。俺はまだ......」


 まだ魔法のことを諦めきれない俺がいた。なんせこの十五年間俺は、賢者になる勉強だけをしてきたんだから。もしかしたら、装置の不動作かもしれない。俺はまだ魔法が使えるかもしれないと希望を持っていた。


 だが、そんな考えとは裏腹に、父さんや兄さんは俺の事を冷たい目で見てきていた。


(なんでそんな目で見てくるんだよ......)


 昨日までは、あんなに優しく接してくれていたのに......。そして、等々勘当を言い渡される。


「早く荷物をまとめて出て行け。二度と私の前に現れるな!」

「は、はい......」


 今まで努力してきた賢者への道、そしてスミス家に恥じないように身に付けた教養もすべて無駄だったようだ。


 こうして俺は、スミス家を追い出されたのだった。



 実家を追放されて、街で路頭にくれている時、一枚の紙が目に入った。


【ロッドリレル魔法学園に入学しませんか? どんな人種、身分でも才能さえあれば入学ができます!】


(俺も入学したかったな......)


 そう思いつつも、街の中を無心で歩き続けた。


 魔法を使えると思って、魔法の雑学のみを勉強してきた過去の俺を恨んだ。もっと他のことを学んで違う道だってあったのかもしれない。そう思うにほかなかった。


 そんな時、下水道の方に一点の光が見えた。


(なんだあれは?)


 光が照らされているところに歩き始めると、手のひらサイズの生き物が泣きながらうずくまっていた。


「ど、どうしたの?」


 恐る恐る話しかけると、こちらを向いて言った。


「見えるの?」

「え?」


 見えるって? もしかして幽霊? 噂程度に聞いたことがあった。人が居ないところにおびき寄せて呪いなどのいたずらをしてくる生き物がいることを。そう思った瞬間、体が震え始めた。


「だから私が見えるの?」

「う、うん......」


 もし俺の予想が当たっていたら今後どんなことをされるのかわからない。でも目の前で涙を流している生き物がいたら離れるわけにはいかない。


「あ、あなた。もしよかったら私と契約をしない? もう魔力が無いの......」

 

 契約って......。でも俺にはできない。なんたって魔力が無いんだから。


「ごめんね。俺、魔力が無いんだ」

「え? 嘘をつかないで? だってあなたから満ち溢れる魔力が出ているわよ?」

「......。でも今日、魔力が無いってわかったから、嘘じゃないと思うんだ」


 ほんの一瞬俺には魔力があると錯覚したが、今日言い渡されたことが、頭の中で思い浮かぶ。「リアムくん。君に魔力はありません」。だからその淡い期待もすぐに消えた。誰が何て言おうと、俺には魔力がない無能なんだ......。


「わからないけど、私にはあなたは魔力を持っている人だと思うわ。だからお願い! 私と契約をして!」

「......。わかったよ」


 昔の俺だったら断っていたのかもしれない。なんせ父さんには、無駄なことはするな、魔法の勉強だけしろと言われてきたから。でも今の俺は、ただのスミス。もう失うものも無いなら、得体も知らない生き物でさえ助けてあげたいと思った。


「ありがとう! じゃあ契約するね。少し魔力が減るけどあなたなら大丈夫だと思うから心配しないでね」

「う、うん」


 すると、俺とその生き物の周辺が光出した。


(え? これって......)



 この出会いが、俺の人生を大きく変えた。本当の魔力とは何だったのか。俺は本当に魔力が無かったのか。それを知るのは、そう遠くはなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る