色とりどりの仲間達
「ちょっと、いつまで浸ってるのよ。」
「それにしても、本当に白い大地に1本だけ道があるんだな。」
「うん。御子様を感じる・・・」
道を眺めつつ感じ入っているジータンを押しのけるように船から下りてきたのは、私のパーティ仲間達。
何度も言うけど、ジータンはタクテリア出身。タクテリアと言えば人族の国。
他の種族は・・・基本的には存在しないことになっている。
そうはいっても、国の重鎮にドワーフとエルフの血を継いでいたワージッポ・グラノフ博士なんていう例外がないことはなかったけど。
唯一例外が、わがナッタジ領で、初代様の元に集ったのは、エルフにドワーフ、獣人まで、本当に多種多様だったらしい。
そのおかげか、ナッタジ領には多くのドワーフや、少数ながらもエルフだったり、獣人が、差別されることなく生活している。
他の国からやってきた冒険者で、多種族の者は、その過ごしやすさからナッタジ領に拠点を置くことも多い。
実は、そうやって集まってきた人たちがジータンの仲間だったりするのだ。
人族である剣士兼魔導師のジータン。
エルフで斥候や罠対策が得意なミノン。
まさかの獣人なのに魔導師ジキ。
ジータンの剣の師匠でもあるドワーフのカイゲン。
前二人が女、後ろが男の男女混合、種族混合パーティだ。
これはジータンの理想でもあった。
なんせ憧れの初代様は、その仲間にエルフもドワーフも獣人もいたのだから。
ちなみにこのパーティ、出会いは当然ミモザだ。あ、カイゲンだけは別。カイゲンは昔、かの初代様のパーティメンバーであるドワーフのカイザー様とも面識のあった、あくまでも自称、だけど、そんな職人で、ジータンの生まれた村で生活をしていたのだ。なお、あくまで自称だが、初代様とも面識があったとか無かったとか・・・・
初代様に憧れ冒険者になる、と決めたジータンだが、その初代様の冒険譚を話してくれたのも彼だった。
本気で冒険者になりたいと言ったジータンに、責任を感じて、ジータンを立派な冒険者へと育て上げここまでついてきてくれたのだ。
そんな二人はミモザで冒険者登録をして、メキメキと頭角を現したのだが、そんな折、酒場で獣人とエルフの喧嘩のシーンに出くわした。
「いいや。セスが上だよ。なんせダー様をセスの民に迎えたのは我がセスなんだからね。」
「いいや。我々パッデの民は御子様に直接家族だ、と宣言していただいたのだ。我々こそ御子様の信者にして恐れ多くも家族と言える!」
「セスにとって、その民はみんな家族だ。ダー様もそう宣言したのだよ。なんせ、あの方のパーティメンバーには二人もセスがいるんだからね。いいや、ダー様を入れて3人か。」
「それを言うならパッデの民からは、世界一周の旅に所望された方がおられる。まさに家族として供を命じられたのだ。」
実際、こういう言い合いは、ミモザでは珍しくなかった。
誰が初代様の家族なのか、我こそが!なんて言う酔っ払いも多い。
長寿の民なんかは、本人に会って言われただの、そういう戯れ言も言いたい放題だ。
しかしこういうときには、必ず同じような仲裁が入るものだ。
主にナッタジ領出身のベテランが中に入るものなのだが・・・
なのだが、そのときはなぜかジータンが彼らに歩を進めたのだった。
若い彼女が入るのは本来あんまりないし、実際ジータンも今までそういう場に出くわしても口を出したことなどなかったのだが・・・・
「ねえ、二人とも。初代様のことが大好きで家族だって言いたい気持ちは分かるわ。でもね、ここナッタジ領の領民ならみんな知ってるわよ。初代様が成人して領を賜ったときのお言葉よ。『領民はみんな僕の大切な家族で、仲間なんだ。僕ができることなんてたかがしれている。だから、僕はみんなのことをいっぱい頼ると思うし、僕を頼ってください。僕ら家族、みんなで幸せになろう!』・・・・だからね、私たちはみんな家族。そして、初代様は世界中の民と家族だって言ってるから、初代様の家族はみんな家族。ね、みんなでいっぱい幸せになろうよ。私はジータン。ナッタジの家族の末端にして、世界中の初代様の家族の家族です。よろしくね。」
二人は、一瞬きょとんとして、だが、すぐに差し出された手を握り返す。
「世界中の人と友達になってみんなと幸せになれたらいいなぁ。」
そんな初代様の笑顔が、見えた気がした。
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