未来に続く一筋の道 **** サポーター様リクエスト企画 ****
ミモザの冒険者ジータン
(筆者からひとこと)
このお話はサポーター様よりいただいたお題で、ダーたちの未来軸を書く、というものです。なかなかに自分的にはスリリングなお題で、楽しめました。
が、多少、今後のネタバレ的な要素全くないとは言えません。とは言っても、極力本筋は隠した上で匂わせを行ってるつもりですが・・・
その辺りご了承の上、読む読まないの判断をしてください。
では、早速、本文をどうぞ・・・
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「やったぁ!ついに着いたぁ。ハハハ、まだ地面が揺れてるみたい。」
少女は目の前の白い大地にたった1本連なる、その道を感動をもって見ると、盛大なのびをしながら、力いっぱい叫んだ。
とうとう、自分は夢にまで見た新大陸にたどり着いたんだ、と、胸をいっぱいにしながら・・・
少女の名はジータン。
女としては多少背が高いか?それでもまぁ、中肉中背。
耳元でそろえらていた髪も、今は長い船旅で、肩まで届きそうになっている。
こう見えて優秀で、王都の剣士養成校だけでなく魔導師養成校も卒業した
ジータンは、タクテリア聖王国ナッタジ領はミモザの冒険者ギルドに籍を置く、自称優秀な冒険者だ。
ナッタジ領ミモザは港町として聖王国一の規模を誇る。
御領主様はナッタジ公爵様で、元々は王族の方だったとか。
ただ、代々代官を置かれており、現領主がどんな方だかはあんまり知られていない。というか、領主様が代替わりしたという話は、領が始まってから1度も聞いたことがないのだとか。
噂に聞く長寿のドワーフやエルフじゃあるまいし、人族の御領主様が代替わりしていないなんてことはあり得ないけど、このナッタジ領ってのは本来は人族だけの国である聖王国にとって特殊だから、そんな噂も立つんだろう、って領民は笑っている。
なんせ、この領、初代様が世界中から集めたという、多種族の人が普通に暮らす、特殊な地域、なんだから。
ジータンは、そんな特殊な地域で生まれた。
一応自身は人族だけど、周りにはドワーフがたくさんいた。
地域で言えばナッタジ領トレシュク地方。
森の中にある小さな集落で、実は初代様が初代様になられる前のお子様の頃、訪問されたんだってことだけが自慢の、なんにもない村だった。
そんな村でも、皮の加工に自信があって、それを学びに、だったり、指導にだったり、と、ドワーフ族の人がたくさん訪れ、中には住み着くようになったらしい。
ジータンが生まれた頃には、人族とドワーフが半々ぐらいの人口比になってたから、人族だけの国って言われても、頭にハテナが飛ぶけどね。
とはいえ、冒険者としてタクテリアを転々としたジータン。
ナッタジ領が、相当風変わりな土地、ということも理解している。
あとは、ミモザの冒険者の姿も。
人族だけではなく、一般に人にとって、髪色をいじる、というのは、一種のタブーだ。
髪の色はその者に宿る魔力の質と量をつまびらかにする。
この色を偽るのは、本来の自身を偽って人々を騙す行為だ、なんていう風に思われ、信用を著しく損なう行為、なんだそう。
けど、ミモザ。この港町ではちょっとばかり意味が異なる。
多くの子供達は、濃紺から黒に髪を染められ、小さなネココ、と呼ばれる植物だか動物だか分からない海辺の魔物から集められた極小サイズの色とりどりの魔石をその黒い髪に撒くのだ。
これで、髪を御領主様に似せることにより、何かと狙われがちな御領主様を守ったのだ、という。その誇りと、いろんなことに秀でたと言われる初代様の力にあやかる意味でもって、子供達の髪を彩ることはミモザの伝統だ。
普通は成人までの子供達に施すものだけど、中には成人してもそのままの髪色を維持する者も少なくない。
それだけ、初代様の人気が高い、ということでもあるのだけれど・・・
特に、冒険者として数々の伝説を成し遂げたと言われる初代様のこと。
それにあやかり、冒険者になる者は濃紺にキラキラの髪にするものは多い。
ミモザ出身者だけではなく、出身地は異なる者も、わざわざミモザに来て、髪を染め、ミモザで冒険者登録をする、というのも、初代様ファンの冒険者にとって、あるあるの事項だ。
かくいうジータンも・・・
ジータンは、この新しい大地に濃紺の髪をなびかせて、まっすぐに伸びる1本の道を、まぶしげに眺めるのであった。
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