後日談

 あ、雪だわ。

 私は、空を見上げて思わずつぶやいた。


 1年前の、ちょうどこんな初雪が降った日。

 姉に偶然町中で会ったんだった。

 靴下に願いを書いた物を入れて枕元に置く、そんなおまじないを教えられ、不覚にもやってしまった私。


 でも・・・


 不覚、じゃなかったのかしら。


 あれからは怒濤の1年だったわ。


 御前裁判だと、大騒ぎしたあの頃。

 ダンシュタの代官が犯人で、その原因があの美しい奴隷の親子で・・・・

 その奴隷の親子っていうのが、ダンシュタの代官ととある大店の番頭に嵌められ、殺された家族の生き残りだったとかなんとか。

 結論から言うとダンシュタの代官が罪に問われ、代わりに任命されたのがうちの旦那様で。


 ああなんてこと。


 気がつくと、あのおまじないが効いたってことなんじゃないの?

 そういえば姉夫婦もダンシュタに小さな店を開くことができたし。


 旦那様はほぼダンシュタの代官屋敷で過ごしているわ。

 私は、今は、ここ領都のお屋敷を守っている。

 人も減ったし、間もなくここは管理人を置くだけの領都邸となるから、私もどうするかを決めなきゃならない。とはいえ、もう決まってるけれど。

 従業員の中には、領都でなければお暇したいと辞めていく人もいる。

 通いの人や家族がいれば仕方が無いのだけれど。


 私は、春になったらダンシュタの代官屋敷へと職場を移すつもり。

 まだ決めかねている人の世話とか、御用商人との折衝とか、まぁ、いろいろ残務処理にも長くかかっているのだけれど・・・

 それに代官っていうお仕事は、領主としてデンと構えているだけでいいわけじゃなくて、以外と領都に来る用事も多いから、このお屋敷も、それなりに維持しなくちゃならないから、その辺りのやりくりも、私の仕事だったりする。

 結局は、領都とダンシュタを行ったり来たりの生活になりそうだけれども、それはそれで楽しみよね。

 領都から出ることなんて、ないと思っていたし。


 ともあれ


 今日は鳥の丸焼きにしましょうか。

 ひげのおじいさんは無理でも、私が赤色の服でも着ようかしら。

 やっぱり靴下も用意しよう。

 だって、本当にかなっちゃったし。


 その夜


 「メリークリスマス」


 私はつぶやいて枕元に靴下を置いた。


 『いつかあの奴隷の親子と再会できますように。』


 私の願いは叶うのだろうか?


 メリークリスマス・・・・


  ======= 完 =======

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