【クリスマス企画】パリーさんの聖なる夜
ある赤ちゃんとの出会い
~ はじめに ~
このお話しはシリーズ第1弾のネタバレ的な何かを含みます。
単体でも読めますが、この後「私の赤ちゃん」を読む予定の方は、ネタバレ注意です。(一応さらっと流してはいますが・・・)
以下、おはなしはじまります
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「あ、雪だわ。」
今年初めての雪。
そろそろ冬支度も本格的にしなくっちゃね、そう思いながら、手にハーッと暖かい息を吹きかける。
私の名前はパリー。
とあるお貴族様のメイドをやっているわ。
私のご主人様=旦那様は、とっても変わっている。いえ違うわね、とっても気の毒な方なのよ。
ご実家もお金持ち。法衣貴族だけど、代々ご領主の覚えもめでたく、特に今の旦那様は優秀だという噂。だけどねぇ。
旦那様は、お貴族様なのに魔法を使えない。
私?
私はこのきれいな髪を見てもらえればわかるでしょ?淡い水色の髪は小さい頃から垂涎の的。残念ながら三女っていうので、本来ならそれほど大事にされないでしょうけど、我が家で誰よりも濃い色をしている私は、産まれながらに大事にされたものよ。
実際、平民としては私は素晴らしい魔力を持っているし、魔法も使えるわ。
そりゃね、お貴族様とか魔導師の冒険者なんかに比べたら全然だけど、魔法が使える平民なんてほとんどいないもの。
魔力は魔導具が使えればそれで問題ない。
魔導具が使えないほど魔力がない人はほとんどいないから、魔導具さえつかえればよくて、魔力の通り道を通すのは魔導具を使うため。はじめっから魔法を使うことを平民は考えないものなのよ。
まぁ、我が家はそれなりにお金があった商人だったってのもあって、期待された私は魔法の訓練を受けさせてもらえたわ。
そしてしっかりと水魔法を使えるようになったの。
チョロチョロと手から水が出るだけだし、コップ1杯がやっととはいえ、魔導具なしで魔法を使えるのは、もう本当に凄いことなのよ。
おかげで、中堅商人の三女でありながらも、お貴族様のメイドとして働き口を見つけ、それなりの地位も得たの。
仲間のメイドには貴族の家の子もいれば、平民もいる。
そんな中平民でもそれなりの地位を得れたのは、この髪のお陰よ。
だって、そのお陰で、両親は私に立派な教育を受けさせてくれたんだもの。
魔法の勉強だけじゃなく、大きな商会やお貴族様に仕えることになっても、なんだったらお嫁さんになっても問題ないように、お作法から文字、計算、お料理にお裁縫、ちゃんと小さい子から学んできたのが、無駄じゃなかったってことね。
うちの旦那様は、基本的には優秀な方。
魔法を使えないことで、幼少の頃から惨めな思いをされたらしいけど、それをはねのけて才覚で周りを黙らせた方なの。
ただ、その反動か、ちょっとばかり困った趣味があるのよね。
それは、奴隷の購入。
奴隷を働かせる、なんていうのは貴族だったりお金持ちだったらそんなに不思議なことじゃないわ。実際私の実家にも何人か奴隷がいたもの。
奴隷は、人を雇うよりも安心安全かつ安いから、結構重宝されるのよね。
大変な仕事をするのは奴隷で表向きの仕事が雇われた人っていうのは当然のこと。
私のやっているメイドの仕事なんてものも、キツいのは奴隷がやるって場合も多いわね。主人と直接接触するような仕事は雇われた人がやって、下働きは奴隷がするなんてパターンも。
奴隷がいない場合は、それが平民の仕事になって、貴族出身の方は人目のつく仕事ってことも多いけどね。
私の職場はそういう意味でも、変わっている。
旦那様はある種の奴隷を買う趣味があって、奴隷がたくさんいるのに、きつい仕事を彼らにさせるわけじゃない。
冬場の水仕事、お洗濯や水汲みとかね、そういうのは、奴隷がいるなら奴隷の仕事なのに、私たちがやっていて、奴隷達は一切しないのよ。
はじめはびっくりしたものよ。
じゃあ、どうして旦那様は奴隷を買うか。
見れば分かるけど、みんな見目麗しく、見るからに魔法を使えますって感じ。
ほら、髪の濃さを見れば魔力量とか質なんかがわかるでしょ。
私だって、それなりの魔力量で魔法が使えるんだけど、そんな私でも、ため息がつくほど美しい人ばかり。世の中にはこんな綺麗な人もいるんだ、ってため息が出てきそう。
髪が美しいだけでも美人の象徴だけど、お顔の作りも違うのかしら。
お肌も綺麗だし、魔力量は美を表すというのは本当なんだ、って、目の前に突き付けられた感じ。
まぁ、みんな奴隷だから、綺麗な人を
まぁ、私の意見はいいとして、そう、旦那様が買ってくる奴隷はみんな魔法を使える、それもかなりの強者っていえる人ばかり。
しかも、そんな魔導師たちといってもいい人に、魔法を禁じるのよ。旦那様がOKしない限り彼らは魔法を使えない。奴隷の契約で、それは絶対的ルールになっているって噂。
実際、彼らが魔法を使うのを見たことがある、っていう人はいない。奴隷が魔法を使わなくても、旦那様に雇われている兵隊たちの中には凄腕の魔導師もいるし、必要はないのでしょう。
それにしても・・・
私は、この寒さで去年の冬のことを思い出す。
旦那様はまた悪い趣味を発揮なされた。
今までに無いほどに小さな子供たち。
まばゆいばかりの白銀の少女と、その子に抱かれた、夜空のごとき濃紺に多種多様の光をまるで宝石を散らせたように輝かせる、小さな赤ん坊。
痩せこけてはいるけれど、息をのむほどに美しい子供の奴隷を、ご機嫌でお屋敷に連れてきたのだった。
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