【七夕企画】年に一度の私の王子様

あこがれの神子様

 私の名はレレ。

 村では、数少ない魔法の使い手なんだ。


 私の村はパッデ村っていいます。

 昔、エッセル神様が降臨され作られた、神の国に似せた、この世界のどこにもない、素敵な村なの。


 村のみんなはとっても仲よしです。

 「和をもって貴しとなす。」

 これはエッセル神様の教え。


 この村の人は全員獣人で、獣人って虐げられていた種族なんだって。

 何人かの仲間と家族を引き連れて逃亡生活を送っていた時にエッセル神様と出会ったのは、おじいちゃんたちが子供だった頃。

 エッセル神様はいつもおおらかに笑っていて、人生楽しまないと!と、いろいろ教えてくださったんだそうです。

 そして、神の国を模したこの村を作られた。

 村人に服をつくってくれたのも、エッセル神様。

 ぼろを身に纏っていたみんなに、簡単に作れるから、と、草で糸を作り、それを織る方法を伝えてくれて、独特の衣装も教えてくれた。

 その服も、神の国の服と同じなんだって。


 エッセル神様は、虫の食べ物だと思われていた草を育てて、おいしい米という種に変化させ、それを炊いて食べるっていう、神の食物を教えてくれた。

 この米っていうのは、上手に保管すれば何年でも食べられるんだって言って、育て方も教えてくれたけど、残念ながら、保管している間に虫に食べられちゃって、本当に何年も食べられるかは分かっていない。

 でも、秋に収穫し、雪に閉ざされて食べ物がない季節でも、この米は私たちのお腹を満たしてくれる。

 これで、飢えて死んじゃう人はほとんどいなくなったの。

 秋から冬にかけて、お米を食べ、春になると森の恵みが私たちを満たしてくれる。

 私たち子供は飢えを知らずに育つことが出来ている。

 全部、ぜぇんぶ、エッセル神様のおかげ。



 色々エッセル神様が教えてくれたことはたくさんあるけど、その滞在はそれほど長くはなかったんだって。

 自分たちのことは自分たちで考えてやっていくんだ、と言って、方法とサンプルを色々置いて、エッセル神様たち一行は旅立っていったんだそう。いつか、何十年後になるかもだけど、必ずみんなが立派にやってるか見に来るから、そう言って旅立っていった。


 私たち獣人の寿命は短い。

 獣人50年、人種100年、ドワーフ500年、エルフ1000年。

 そんな風にいわれる寿命だから、人種であるエッセル神様は私たちの2倍も長生きする。

 エッセル神様が降臨されたときワコ様だった村長様は、今はヒコ様になっている。

 ちなみに長老様は代々ヒコ様っていうお名前。ヒコ様の子供がミコ様、ミコ様の子供がワコ様。そう名前が代々受け継がれていくんだけど、つまりはエッセル神様が降臨されたとき子供だったのに、今はおじいさん、ってこと。


 それだけ時が流れた現在、村は発展し、それがエッセル神様の導きのとおり正解なのか、ぜひとも見ていただきたいものだ、というのが村人みんなの願いだったの。



 そんな中、前の前の秋の頃。

 村に奇蹟が起こったの。

 そう、神子様のご降臨という奇蹟が。



 神子様。


 一目見て、この方は特別な方だと分かったわ。

 まだ、私よりもお小さい幼い子供だったけど、神様だ、って分かったもの。


 神子様は、まるで夜空を纏った太陽みたいな方だった。

 魔力を宿し表すという、その御髪。

 黒に近い濃紺で、キラキラといろんな色の光を纏っていたの。

 普通、髪なんて一色でしょ?

 なのに、たくさんの色を纏っていて、すべてが輝いている。

 太陽の光、月の光、炎の光。

 それらを受けると、キラキラと色とりどりに輝くの。


 髪、が特徴的だけど、そのお顔も愛らしい。


 クリッとしたお目々が、たくさんの好奇心をかかえて、忙しく変化するの。

 ぷっくりした白いほっぺはふわふわの雲みたい。

 閉じられていると小さいって感じるきれいな赤い口は、普段は大きく開けられ、これも目と同じで本当に良く動く。

 よく笑い、よくしゃべり、よく怒り、そして、ふふふ、よく泣くの。

 感情豊かで、大人にも平気でくってかかるし、なんだったら魔法でとっちめちゃう。やり過ぎだって、叱られてシュンとしている姿も愛らしい。


 いっしょに来た人なんかは非常識だって言うけど、非常識は非常識でも良い非常識なんだって思うの。だって神子様なんだもの、ふつうと違うのは当たり前。なのに人間と同じに考える方が非常識だと思うわ。


 神子様は本当に神様みたい。


 大きな蜂蜜の巣箱を魔法で持ち上げ、クルクルと回して、蜂蜜を搾るんだもの。

 この作業をするために、おうちまで建てることになったのよ。

 力持ちの獣人の、その中でも戦士たちが何人もかかっても全然持ち上げられない、あの大きな箱を、蜂蜜のたっぷり入った箱を、たった一人で軽々持ち上げ、目にもとまらない速さで回転させて、蜜をはじき飛ばしちゃうんだもの。

 ほんと、すごいよ。

 エルフの魔導師にだって、あんなことはできないって、村長様も言ってました。


 一緒に来た女の人が、神子様のこと怒って、竹の鞭でぶったんだけどね、そのことが気に入らなかった神子様。その鞭を魔法で燃やしちゃったの。

 でもそこが油をとる花の畑だったから、びっくりした女の人が手放した鞭の火が、種に燃え移って、大惨事になったの。

 お仲間が土魔法で消火して無事だったんだけどね、そのとき言ってた。

 自分の意見が通らないからって、暴力をふるって言うことを聞かそうとするのは間違っている、って。

 まぁ、それに対して暴力で答えたってことで神子様もお仲間に叱られて、泣いちゃったけどね。

 そこもまた可愛い感じ。

 なんたって5歳の男の子なんだもの。


 私はちょっぴりお姉さんだけど、小さくて大きいその背中を見つめていてもいい、ですよね。私のあこがれの神子様・・・


 

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