第6話 余命宣告
僕はカフェでそんな話を聞かされた。何も言えなかった。
夏見はアイスティーをゆっくりかき混ぜながら言った。
「湊の絵を見て、びっくりしちゃった。本当に、そっくりだったから。あの日の景色に……」
夏見はそう、寂しそうに言った。僕は冷めきったホットココアを啜る。
夏見は急に笑顔を取り戻し、僕に言った。
「でもね、私思うんだ。彼女は本当に凄い子だって。だってさ、自分の願いを叶えて自由になったんだよ、彼女は。誰にも干渉されない、いじめも受けない、遠い場所に……」
そう言って笑う夏見に、僕はどこか虚しさを感じた。冷めたココアを飲んだ僕は、夏見にどうしても聞きたいことがあったのを思い出す。
「……夏見は、死ぬの?」
直球だが、それ以外の言葉で取り繕うのは苦手だ。夏見は表情を変えずに言った。
「余命はあと二ヶ月」
二ヶ月。落ちていく日を見つめながら、僕は小さく呟いた。
「九月……か」
✳︎
次の日。夏見はやっぱりいつも通りの笑顔で学校に来た。そしてみんなと元気に挨拶を交わしていく。やっぱり騒がしい。……でも、前より嫌ではなくなった。余命を聞いたからだろうか。別れが惜しい。
朝のホームルーム。担任の先生が、紙を配っている。配られた紙を見て、僕は肩を落とす。また僕の嫌いな時期がやってきた。……文化祭だ。心の奥底がズキズキと痛む。
そんな僕の気持ちとは裏腹に、クラスメイトらは大盛り上がり。文化祭の出し物決めが行われた。演劇、アイスクリーム屋、バザー、クレープ屋、たこ焼き屋。
文化祭は十月だぞ。アイスクリームなんか売れないだろ。……いや、待て。お客さんが来ないなら暇なのでは? それは楽だ。……あ、でも売れ残ったらみんなで食べるはめになるのか。だめだ却下だ。
クラス委員が仕切る。
「とりあえず、屋台はまとめとくぞ。演劇、屋台、バザー。……他に無ければこれで多数決を取るぞ」
特に他に候補があがらず、多数決をとることに。
「全員ふせろー」
全員机に突っ伏し、やりたいものに一つあげる。僕はバザーに手をあげた。……演劇だけは嫌だからな。
「よし、おっけー」
顔をあげた僕はまた肩を落とす。半分以上が演劇に手をあげていた。
……お前ら、マジかよ。
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