詩「雨を眺めて」
有原野分
雨を眺めて
冷たくて甘い
アイスキャンディーのように
生きているということが
溶けてしまわないうちに
ぼくはきみの名前を幾度も口にする
傘を差すその度に
果たして本当にこの形で合っているの
かと
そのことばかり考えてしまい
雨のことなんてついと忘れてしまうの
で
ある意味傘としての役割は果たしてい
るのかもしれないが
どうしても傘のこの形に
ぼくたちはなにか意味をつけたがるの
で
だからぼくたちはいつも雨に濡れるの
だろう
扇風機から
夜が部屋に流れ込んでくる
膨らんだ風船が弾けるように
その勢いは過去を押し流して
ぼくをむりやり未来へ連れて行く
小学生の頃
長靴を履いて
水たまりに飛び込んだことがあった
それからは雨の日になると
ぼくの体は少し透明になって
すべての雨を透過して
ただ足元に水たまりを作るだけの日に
もしかしたら
あの水たまりの中に
なにか神さま的なものがいて
ぼくはそれを踏んでしまったのかもし
れない
「雨を見るといつもきみを思い出す
ぼくは今でもきみに会いたいんだ
詩「雨を眺めて」 有原野分 @yujiarihara
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