第16話「凱旋勇者」

勇者ノエル・エーデルローズは剣を構えた。

魔王アウモスはそのまま安易に突っ込む。


「貴方はやはり三下ですね」

「戯言を!!」


アウモスの細剣とぶつかるのはノエルの剣。ただの剣ではない。

しっかりと鍛えられている。そこに彼女の魔力が重なり力は

かなり上がっている。


「だがなぁ…人間は脆い!」

「うわっ!?」


フワフワと体が浮くような空間。分かっている、これは幻覚の類だ。

そういった術を得意とする魔王アウモス。彼はこれらの術を上手く

利用して多くの配下を作り出してきた。


「新参者の勇者など恐れる必要などない!」


高笑いをするアウモスに対してダリューンはゆっくりと椅子の背もたれに

体を預ける。


「ではお前に問うが、お前は古代天体魔術を使うことは出来るか」

「それは難しいですね…幾つか存在する古代魔術でも難易度はかなり高いの

ですから。それが?」

「だとよ。見せてやれノエル。他者を苦しめて来た魔王を退治することが

お前の最初の偉業だ」


ダリューンが高らかに言った。扉に亀裂が走る。


「幾千もの時を流れ、人を支えし宝、知識の星!

                  ―真・天体魔術:水星マーキュリー!」

「真・天体魔術!?」

「嘘でしょ!?古代天体魔術だけでも扱うのは難しいのに…更にそれを

簡略化して自分に適した形にして新たな魔術にするなんて…!」


カルミラたちも驚いていた。そこにはスカーレットとダリューンも含まれる。

彼等も予想していなかった。彼女はこの土壇場で新たな才能を開花させた。

長き時を生きる魔王ですら辿り着けない場所へ辿り着いている。

ダリューンは立ち上がりノエルの隣に立つ。


「お前に反撃は許さない。警戒していた俺が馬鹿だった。お前は正直

弱過ぎる。魔力をただ爆発させることしかできない。やはりあれだな、

お前は他人を頼り過ぎたせいで力が衰えてしまったのだな」


アウモスはただ歯軋りをするだけだった。グローザの死を確信してしまった。

偽装された死は彼女なりのアウモスに対する反抗だったのかもしれない。


「さてと、俺も使ってみるとするかな」

「え?え?」

「お前は太陽を使えばいい。俺はルーナを使おう。色々と図書館を

回り俺も研究したのさ。そして見つけた、名前をエクリプス」


剣を抜き、ノエルの剣と重ねる。


「俺がお前に合わせる。お前は最大限を絞り出せ!」

「は、はいぃ!!」


温かく地上を明るく照らす『太陽』

静かに地上を明るく照らす『月』

共に現れる事の無い対となる二つの星の力を合わせると言うのは

今まで交わる事の無かった魔物と人間が互いに力を

会わせるようになったという事を同じなのだろう。


「「エクリプスッ!!!」」



別の場所。大きな戦いを終えた、アランたちが国に戻ってきた。


「遅いわ。もっと早く帰って来られなかったのかしら」


辛口コメントを投げて来たのはテティスだった。


「それが出来れば苦労はしないんだけどなぁ…」

「そろそろノエル様たちも帰られるそうよ。無事に魔王アウモスも

滅してやったとノエル様が上機嫌に語っていたわ」


国を襲った張本人を討伐して気分はスッキリとしたらしい。

テティスはせっせと動いていた。他の国民たちも何やらそそくさと

動いていた。


「凱旋パレードよ。やるのは普通でしょう」

「相も変わらず、この国はスゲェよな…」


アランとエレンは互いを見てふと笑う。

誰かがノエルたちが戻ってきたことを知らせる。すると全員が一斉に動き出した。


「ノエル様ァァァァァ!!!!」


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コールドスリープ勇者 花道優曇華 @snow1comer

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