第2話「宴会勇者」
日記に書かれていたのは今まで自分が行ってきたことと
これからやることになるであろう戦いの事。
「どうされました」
スカーレットは声を掛けて来た。今日も陽が出ている。ダンピーラには
少々キツイ日差しらしい。
「ううん、何でもない。スカーレット、本当に大丈夫?ずっと日差しを
浴びながら歩いてたから結構疲れてるんじゃあ…」
「大丈夫ですよ。吸血鬼の様に日に当たったら死ぬなんてことはありませんから」
「アリーシャとモモネ…それにスカーレット。他にも幹部の人たちは
いるんだよね?」
ノエルの質問に彼は頷いた。
「はい。幹部もまた様々な種族でまとめられています。ノエル様と同じ人間の方も
いらっしゃるので集めましょうか?しっかり顔と名前を覚えたいでしょう」
その通り。人の上に立つのだからせめて幹部の名前と顔だけでも覚えなければ。
スカーレットが再び陽の光を浴びながら歩く。
この国では此方から人間に手を出してはいけないというルールが存在する。
人間と対等に関わり合うために必要なルーツ。
「ノエル様」
「うわっ!ビックリしたぁ…」
忍び装束を着込んだ青髪の鬼。鬼人特有の角が無ければ人間と何も変わらない。
それに顔立ちは俗にいうイケメンの部類に入るじゃねえか!!
「お初にお目にかかります。プラテリア連邦国諜報部隊隊長
ソーマと申します」
ソーマ…またまた和風な名前。何だ?鬼人にはそういう風習があるのか?
彼は本心からノエルを主として認めているようだ。彼だけでなくスカーレットも
そうだった。
「ソーマは、さ…不満じゃないの?」
「?何が、でしょうか」
「突然、ここに来た人間である私の事…もっと忠義を誓うべき相応しい人が
いるんじゃないの?」
ポーカーフェイスを貫くソーマは即座に返した。
「とんでもない。貴方様は先代の王が直に認めた選ばれし存在。そんな貴女よりも
忠誠を誓うべき存在などおりません」
ノエルはポカンとしていた。この言葉は本物だ。何でも目を見れば本心も
見えてくる。この国の人々は皆、新参者である
君臨することを一ミリも不満に思っていない。
「…そっか。じゃあ頑張らなきゃね!そんなに期待されてるんだから」
その日の夜に宴が開かれた。賑やかだ。宴っていうよりも祭りに近い。
魔物たち曰く「新たな国王誕生祭」という名目で開かれているらしい。
ダンピーラのスカーレットは国王の代理を任されている。
そして諜報部隊の隊長をしているソーマ。
博識な鬼女モモネ。
それぞれに任された仕事がある。
「姫さん、始めましてだな」
ノエルの事を「姫さん」と呼んできた男もまた綺麗な顔立ちをしていた。
編み込まれた後ろ髪は尻尾の様に揺れている。彼は幹部の中では
今のところ一人しかいない人間だ。しかしその力は魔物と同等。
「アラン・ヴェール。これでも人間側では拳聖という肩書を背負っている」
「け、拳聖!?凄いッッ!!!」
ノエルはグイグイと彼に迫る。その勢いにアランは驚き、どんどん後退る。
「ま、待て!落ち着いてくれ!拳聖と言っても俺はその称号を得たばかりの
最弱だ」
「でも、それだけの力があるって事ですよね!?」
「否定はしないけども…はぁ」
予想外の反応を見せるノエルにアランは負けていた。
「…自分が率いる軍とか、いるの?」
「率いるっていうか…鍛えるって感じか?俺の戦い方はあまり多数を相手にするには
向いていない」
「嘘つけ。お前、拳一発で地面割ってんじゃねえか」
そう口を挟んだのはスカーレットだった。
「アリーシャが魔力付加をしてアランが魔法を完璧に扱える状態にする。
身体能力に全てをタス振りしてるからな。魔法は初級程度しか扱えないのです」
「強いけど、弱点になるようなところもあるって事だね。つまり魔法で
挑めば勝てると?」
「ノエル様ならば余裕でしょうね」
え、なにその言葉。私じゃなかったら勝てないみたいな言い方やめて。
アラン=とりあえず強いと言う事だけは分かった。
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