第4話 別れ部屋
「別れ部屋」
週末 深夜 晩夏のこと
高層 部屋 夜景のとき
無機的な場所で
無意味なやりとり
僕の見た
絶望風景
写真を焼く女
何かを懇願する女
涙さえ見せない女
明かりさえ消えた部屋
アルバムを開く男
何もかも拒絶する男
冷酷になりきれない男
街灯さえ届かない部屋
嗚咽する女
慟哭する女
みすぼらしい女
湿った悲しい部屋
黙り込む男
動かない男
憎しみだけの男
交わった記憶だけの部屋
それから静かな時間が来て
何もかも闇に包まれて
ただ黙り込んで
できる限り距離を置いて
お互いに気配を消して
朝が来るのをじっと待っていた
それしかできなかった
もう話すことなど何もなかった
手を繋いだことも
お互いを労わることも
笑ったことも
楽しかったことも
初めての夜のことも
この夏のことも
泣いたことも
苦しんだことも
憎んだことも
裏切ったことも
何もかも忘れて
他人のように
座り込んでいた
始発を待って
この女はきっと帰っていくだろう
夜が明けたら
何事もなかったように
この部屋は
日常を取り戻すだろう
それから僕は
今日の日曜日を最後にして
この場所から消えてしまうだろう
別れ部屋
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