第40話 上出来

 いつものメイドさんのニナ以外に、カティアとサリナが新しい生活に加わった。


 正式に俺の側使えとして雇用する事になったけど、お給金は自分がこの国を出ない限り国が負担してくれるそうだ。


 ありがたい話だけど、個人的に税金にお世話になるのに抵抗がある。なるべく早く、自立した生計を立てられるようにしようと思った。


 数日かけて、礼拝堂だった場所に残っていた一階の左側区画、二階の全区画と、どんどん改修を済ませ、ようやく自分の居住区画の三階に到達。


 三階は、ニナ達メイドさんと王族の方々、カタリナさんしか通れないように結界を張っておいた。世間から隔離したプライベート空間に仕立てるつもりだ。


 用のある時は、一階の中央区画に設けた書斎か執務室に来てもらう。ここから、三階への直通階段を通してあるので、何かあれば下の階に赴く。


 リンリーン!


 と、鳴るインターホンのような魔道具を設置しておいた。用があればこれを押すだけで良いのだ。


 天井が一階や二階より高いので、屋根裏部屋も設けた。


 今までの仕切りは全部取っ払って、寝室に談話室、書庫、大きめの工房と展示室、換気が出来る調合部屋に仕切り直す。


 それでも、スペースに余裕があったので、多目的部屋をいくつか作った。


(我の部屋はないのか?)


 ジークが人化した時の事を忘れてたので、部屋のいくつかを仕切り直した。


(うむ、我の部屋はここじゃな。もうしばらく待つが良い)


 自分の目を通して、部屋を見ていたジークも納得したようなので、次の作業に移る。


 ニナから、護衛の部屋が必要と教えてもらったので、寝室の前の部屋に護衛騎士の部屋を用意した。護衛騎士が赴任するまで、ニナ達が護衛役だそうだ。


 で、肝心のニナ達は、屋根裏部屋を使用すると言われたので許可した。天窓付きの見晴らしのいい広めの部屋にしてあげたら、勿体ないと言われたけど、お世話になりっぱなしなので押し通す。


 貴族が使う部屋より狭いと思ったら、後継者でもない限り広い部屋が与えられる事はないそうだ。


 人を増やす予定はないけど、増えたら区画整理する事を伝えて、取り敢えず納得してもらった。


 改修が概ね終わったので、家具をストレージから取り出しニナの助言に従って置いていく。


 身体強化で重い家具も軽々だ。


「ドレッサーはこちらがよろしいでしょう。寝台はこちらに」


 ニナの頭に既に設置場所のイメージがあるのだろう。テキパキ指示に従ったら、あっという間に部屋が整った。


 おそらく一刻も経っていない……うちのメイドさん出来る!


 ニナ達の部屋も、持ってきた家具を置いてあげた。自分達で運ぶと言っていたけど、俺がやった方が早いので……。ニナの愛用するふかふか寝具もちゃんとある。カティアとサリナにも同じように、ふかふか寝具を置いてあげたら、泣いて喜ばれた。


「リリス様に一生ついていきます!」って……皆、ちょっとオーバーだよ。


 この家に住む人には、等しくふわふわ安眠布団が付いてくるのだ。


 肌が潤うミスト魔道具も、各部屋にプレゼント。皆、貴族出身なので使用については問題ないでしょ。


 また新しい美容魔道具が、出来たら置いてあげよう。


 浴場は二階。大きめの脱衣所と洗面台に、温泉施設並みに広いお風呂場を作った。やっぱりお風呂は大事だよねぇー。扇風機とか体重計もそのうち作ったら置いておこう。

 右区画に女性、左区画に男性のお風呂を設置した。


 女所帯になっちゃったので……風呂場の面積が女湯の方が広いのだ。


 毎日お風呂に入れると知ったカタリナさんが、凄く喜んでくれた。子供達はあんまりピンと来てなかったけど、いざ使ってみたら気持ちよかったのか、全員オフロスキーに……。


 ふふふ、そうだろう、そうだろう。


 心と身体を洗濯するのじゃ。


 内装の改修はこれでほぼ完了と言って良いだろう。


 早速、今日から住まう事にした。王城にある私物は全てストレージに収納してあるので、引っ越し作業はないのだ。


 養護院の子供達に、メイドさん、そして修道士のカタリナさんとの共同生活。


 毎日の食事は、カティアとサリナ、カタリナさんが順番に担当する。


「柔らかいパンですか? 仕込みがちょっとありますけど、二日後から出来るようになります。調味料は、シレーン区画にお店がありますので、明日調達してきますね」


 カティアは料理が趣味らしく、パンも肉料理も魚料理も作れて、食材の知識もあかるかった。


 ふむ、カティアを先生にここの女子限定料理教室を開こう。自分も前世の料理を再現したいので、彼女に師事したいのだ。


 食が豊かになればなるほど、人生に張りが出ますし!


「わたしも、りょうりおぼえたいです!」


 ナナリーちゃんと、マナちゃんも料理教室に参加を表明。


「ええ、皆で料理を覚えましょう!」

「うん! おいしいものたくさんつくれるようになる!」


 二人がフンスと鼻を鳴らすのを、温かく見守った。

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