後悔。
「じゃ、帰るね」
綾がそう言って部屋から出ていった。その後姿を見送りながら、俊は激しい後悔に
いや、それ以前に沙耶に知られるのはもっとまずい。もう綾とは関わらないほうがいいのだろう。いや、そもそも部屋にいれたのがまずかったのだ。
俊は今更ながらやってしまったことに激しい後悔を覚えていた。髪の香り、心地よい肩の抱き心地。
つい。本当に「つい」だ。彼女を抱いてしまった。
俊にとっては女性経験2番目の彼女。沙耶との「初めて」は散々だったが、綾を優しくリードできる自分に少し酔っていた感がある。それだけに「つい」手を出してしまったのだ。
甘いため息をつく綾の姿は、自身を更に熱くさせた。
ああ、もう!
それにしても、自分はどちらをより愛しているのだろう。俊はそう考えた。沙耶はある程度長い付き合いで気も知れている。話していて楽しいのはもちろん沙耶だ。彼女だからこそ言えることだってある。
綾は可愛らしいし、ちょっと臆病気味なところが愛おしいと思う。それは愛なんだろうか。好ましいと思うし、優しくしたいと思わせる雰囲気が彼女にはある。なんとなく自分が大人になった気がするのは綾。
沙耶とよりを戻すことにした以上「どちらが」などと考えている事自体がおかしいのではあるのだが。
思わず。本当に思わず抱いてしまった。迷いがあるのなら、それに決着をつけるべきなのだろう。「どちらも」なんて甘い話などあるわけはないし、それがバレた時のことを思うとぞっとする。
沙耶だ。自分が本当に愛しているのは沙耶なんだ。俊は自分にそう言い聞かせ、乱れたベッドを整えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます