直樹の独白

 沙耶が「付き合うのはやめたい」なんて言い出した。なんていうことだろう。信じられない。あいつとはもう終わりだったんじゃないのか?

 俺は前から沙耶を愛してた。本当に好きだったんだ。あいつみたいにふらふらしているヤツのなにがいいっていうんだ。全く理解できない。

 

 ああ、一時の気の迷いだよね。君は裏切られたことを信じたくなくて、もう一度向き合ってみようと思ったんだよね。

 分かるよ、その気持ち。裏切られるなんて本当に辛いもんだよ。俺はいつでも待っている。君が帰ってくるのを。

 お揃い買ったマグカップ。動物たちがカルテットを奏でている模様のマグカップ。あいつと綾、そして俺と君。この四人でもう一度奏でよう。美しい関係性をもう一度修復しよう。きっとそうなることと思う。


 それにしても綾。あの女があいつをしっかり掴んでいたら、こんなことにはならなかった。沙耶からあいつを奪っておいてこのていたらく。

 いいかい、綾。お前がいたずら電話なんかで困っているのは、そのどこか抜けたところが原因なんだ。


 言ってやりたいが、今、俺は、お前が憎い。


 俺と沙耶との関係を乱しやがって。全くしっかりしてくれよ。それにしてもあいつもあいつだ。今更なにをのこのこと沙耶とやり直そうと思っているんだ。俺は沙耶だけを信じる。信じている。信じられるはずだ。

 信じていたら、きっとまた四人で笑いあえる日がくるはずだ。


 ……あいつと綾を信じられるかが、これからの課題なのかもしれない。

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