ス・パ・イ・ス爆弾。

 俊が学生食堂で食事をしていると、隆と真由美が連れ立ってやってきた。彼らと食事をするのは春休みの合宿以来だ。軽く挨拶を交わし、同じテーブルに彼らはついた。

「綾ちゃんに別れるって言ったんだって?」

 真由美の問いに俊はうなずいた。

「昨日、電話があったけど泣いてたわよ、ちょっと俊くんのやり方って納得できないわ」

「そう言われてもなぁ……」

 と、俊は頭をかいた。

「そういや、いたずら電話がかかってきてるって言ってたな」

 隆がそういうと、真由美も頷きながら

「そうそう、昨日の電話でも言ってた。 怖がっててなんだかかわいそう」


 綾に電話をかけている人物は分からない。自分に言われても困る、というのが俊の率直な意見だが、それを言うのは少しはばかられた。薄情なやつだ、と思われたくないというのが本音。とはいえ、綾に別れを告げた件で株が下がっているような気がしなくもない。


「私が隆にそう言われたら、引っ叩いちゃうかも」

 真由美が笑いながら言う。

「言わねぇよ、怖えぇよ」

 彼らの仲睦なかむつまじさに俊は少し笑ってしまった。

「俊くーん、笑ってる場合じゃないわよ。 なんとかしてあげなよ」

 真由美が呆れるように言った。

「つっても、どうしようもないだろ。 ほっときゃなんとかなるさ」

 俊がそう答えると、真由美は一瞬ムッとした顔をし、

「そういうひとにはー」

 と、テーブル上にある七味を手に取り、俊が食べていたうどんの上に振りかけた。

「ス・パ・イ・ス爆弾!」

 真由美はそういうとキャハハと笑った。 

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