第3話
私は王宮の衛兵に指示を出した。
「王太子を地下牢に入れて下さい。それと阿婆擦れさんが逃げ出しましたので王宮から出さないように。拘束して王太子と同じ地下牢に入れてあげて下さい」
「ち、地下牢ですか!?」
「当然です。聖女である私を追放しようとしたんですからね。本来なら国家反逆罪が適用されてもおかしく無いんですよ? それを地下牢に拘束するだけに留めておいてあげるんだから感謝して欲しいくらいですよ?」
「わ、分かりました!」
衛兵が立ち去った後、私は独り言ちた。
「せめてもの情けです。国王夫妻がお帰りになるまでの間に、せいぜい今後の身の振り方でも考えることですね」
そして大きくため息を吐いて、私を待ち構えている大量の書類と向き合うのだった。もちろん王太子がサボッた仕事の分である。
◇◇◇
一週間後、国王夫妻とパウロ様が帰国された。私は早速、両陛下の留守中に起こったことを報告する。報告している途中から、両陛下のお顔が段々と歪んで行った。やがて報告が終わると...
「聖女テレサよ、此度は誠に迷惑を掛けて済まなんだ。平にご容赦頂きたい」
国王夫妻から頭を下げられた私は慌ててしまった。
「あ、頭をお上げ下さい! 国王、王妃両陛下が軽々しく頭を下げるなどあってはなりません!」
「なあに、我々の頭で良かったらいくらでも下げるぞ? なあ?」
「陛下のおっしゃる通りですわ。我が愚息が大変なご迷惑をお掛けしました。本当にごめんなさいね」
そう言ってまた頭を深く下げてしまった。私は恐縮してしまってどうしたらいいのか分からない。と、そこへ...
「両陛下ともそれくらいにして下さい。テレサが困惑してますよ?」
「パウロ様...」
第2王子のパウロ様がやって来てくれた。私はホッと胸を撫で下ろす。
「テレサ、大変だったね。もう大丈夫。愚兄は僕達の方で処分しておくから安心して」
「ありがとうございます。あの...どんな様子でしたか? 地下牢に収監してから見に行って無いもので...」
「二人して取っ組み合いのケンカをしたみたいだよ? 二人とも傷だらけだった」
その光景が目に浮かぶようで、私は思わず苦笑してしまった。恐らく互いに「お前が悪い!」とか言い合って責任転嫁した挙げ句、手が出てしまったんだろう。真実の愛とやらは儚い幻だったらしい。
「あんなクズどものことはさっさと忘れて、これからの話をしようか」
「これから...ですか...」
「そう。改めてよろしくね。婚約者さん?」
パウロ王子にそう言われた私の顔は、きっと真っ赤になっていると思う。
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