第2話
「はぁっ!? それはどういう意味だ!?」
エロスが目を剥いた。
「言葉通りの意味です。国王陛下夫妻が外遊中の今、私がこの国の最高統治者ですから」
私はシレッと答える。
「そんな訳があるかぁ! 王太子であるこの俺を差し置いて、なんで貴様が最高統治者になれるんだぁ!?」
「だってあなた、仕事してないじゃないですか。王太子としての仕事何かしてますか? そこの阿婆擦れと乳繰り合ってるだけでしょ?」
「うっ!? そ、それは.. 」
「私が目の下に隈を作ってまで王太子の仕事を代行している間、あなたは私を貶めることだけを考えていたんでしょう? そんな人間に国を任せられるはずがありませんよ。たがら国王陛下は私にこの玉璽を委ねて行かれたんです」
そう言って私は懐から玉璽を取り出した。
「バカな...そんなバカな...」
エロスが崩れ落ちた。バカなのはお前だっての。
「大体ですねぇ、周辺各国が集まる国際会議に出席する国王陛下が、あなたではなく第2王子のパウロ様を随行させた時点でおかしいとは思わなかったんですか?」
「それは...俺に留守を任せるって意味かと...」
「周辺各国に次の国家元首のお披露目をするのに絶好の機会を逃してまで? 有り得ませんよ。それだったらパウロ様の方を残すでしょう。あなたが次期国家元首であるならね」
「そ、それはつまり...」
「えぇ、あなたは廃嫡されてパウロ様が王太子になるということです」
「そ、そんな...」
「だから既にあなたには何の権限も無いんですよ。そもそもですねぇ、聖女でありこの国を魔物から守っている私を追放するなんて言語道断です。国を滅ぼす気ですか? 聖域結界が無くなったら、この国は魔物の餌食になるんですよ? 分かってるんですか?」
「うぅっ...」
「それと私との婚約を破棄したいとか言ってましたが、そんなことしなくても私達の婚約は解消されますからご心配なく。私は新たにパウロ様の婚約者になりますから。あなたは平民になってそこの阿婆擦れと仲良くやって下さいな。真実の愛とやらなんでしょう?」
「......」
ついにエロスは無言になってしまった。
「えっ!? なになに!? どういうこと!? エロス様は王子様じゃなくなっちゃうってこと!?」
そこへ阿婆擦れインランが口を出して来た。
「えぇ、そうなりますね」
「えぇ~! じゃあエロス様なんて要らな~い! じゃあね! バイバ~イ!」
そう言って軽やかに去って行った。
ドサッ!
どうやらエロスはショックのあまり気を失ったようだ。
やれやれ...
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