はあ? 聖女である私を国外追放? 残念ですがあなたにそんな権限はありませんよ?
真理亜
第1話
「聖女テレサよ! 貴様の悪行は丸っとお見通しだ! 貴様のように性根の腐った女は聖女として相応しくない! よって今日からこのインランを新しい聖女にする! そして貴様との婚約は破棄して、インランを俺の新しい婚約者にする! 貴様はもう用済みだ! この国から出て行け!」
王太子のエロスがまたなんかバカなことを言い出したな...本当に勘弁して欲しいんだけど...
聖女としての朝のお務めである、この国全土を覆う聖域結界を張り終えて疲れた体を引き摺って自室に帰ってみればこれである。
面倒だけど相手するしかないか...
「はあ...私の悪行というのは?」
「貴様は聖女見習い時代にこの可愛いインランを虐めたそうだな! 大方、インランの膨よかな体に嫉妬したんだろう! 貴様のそのみすぼらしい貧相な体では無理もないな! オマケに年中目の下に隈を作っていつも暗そうな顔をしおって! 貴様が側に居るだけでこっちまで憂鬱な気分になる! もうウンザリだ!」
「エロス様ぁ~♪ インラン、とっても怖かったんですぅ~♪」
「おぉ~! 可哀想なインランよ! もう大丈夫だ! 心配要らんぞ! なにせ俺達は真実の愛で結ばれているんだからな!」
「エロス様ぁ~♪ インランは嬉しゅうございます~♪」
エロスに淫らな格好でしなだれ掛かっているこのインランって女は、私と同期の聖女見習いだった女だ。
素行が悪く修行も真面目に行わず、男漁りばかりに精を出すような阿婆擦れだからすぐに聖女見習いをクビになった。
聖女になるには聖力を高めるため、断食を含めた厳しい修行が課せられる。私の体が痩せているのはそのためだ。そうやって聖力を高めないと、聖域結界を張ることが出来ない。
そして聖女としてもっとも重要な点は、清らかな乙女であるということだ。要するに処女でなければならない。
その点を何度も説明したのだが、このエロスにはどうしても理解できなかったようで、私に対して何度も何度も体を要求して来た。どうやら下半身でしか物を考えられない生き物らしい。
もちろん全て断った。次の聖女が育つまで私が聖女の座を下りる訳にはいかないからだ。
だから節操なく簡単に股を開くインランに走ったのだろう。厳しい修行から逃げ出し処女でもなくなったであろうインランに、間違っても聖女としての務めが熟せるはずもない。
そして私の目の隈が酷いのは、エロスがこのように公務をサボッているのを、婚約者として私がフォローしているからだ。お陰で万年寝不足状態にある。
そんな自分勝手なエロスからの一方的な婚約破棄と追放宣言に腹が立つやら呆れるやらだが、これだけはちゃんと言っておかねばならない。
「エロス様、残念ですが婚約破棄はともかく、あなたに私を追放する権限はありませんよ?」
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