第40話 コン、コン、コン

 麻美さんがベッドで寛いでいたときのこと。

 時間は夜。入浴も済ませ、横になって本を読んでいた。

 ゆったりとした服に着替えていることもあり、すっかりと「寛ぎモード」だったとのこと。

 

 その時。

 

 コン、コン、コン


 自室の窓を叩く音が聞こえた。しっかりとリズムを刻んだ音。

 麻美さんの部屋は2階にある。窓の外はベランダではあるが、洗濯物を干せるほどの広さがあり、木々が触れることはあり得ない。

 また、その広さから外部から物を投げられたとも考えにくい。第一、それらが原因だとすれば「コン、コン、コン」といったリズムではなく不規則なものになるはずだ。

 だとすると。


-誰かが窓を叩いている。


 結論はそこにいきついた。

 窓を叩いている「それ」は一体なんだろうか。異形のものか、あるいは変質者の類いか。

 後者だとすると、速やかに然るべきところに通報する必要がある。

 そしてひとつの問題。この両者のうち、どちらがより恐ろしいのだろうか。

 また、何もいなかった場合も恐ろしいのだろうか。

 

 麻美さんは窓を凝視し、それらについて逡巡した。

 通報するべき案件である可能性がある以上、確認は必至であろう。思い切ってカーテンをさっと開いた。果たして、そこには何もいなかった。

 口から漏れたのは安堵のため息。最も平和的な結果ではある。音の正体は依然不明ではあるが。


 何もいなかったことについては恐怖を感じなかった麻美さんは、少しだけ考えたという。

 音の正体がわかった場合。

 それが異形の者か変質者か、自分はどちらに恐怖を感じるのだろうかと。


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