3.友人と色(2)
「でも、あいつは本当にそれで良いのかな。」
そしてその時、担任の、お前たちなら彼の色を取り戻せると思ったんだ、という言葉を思い出した。
たとえ色が無かろうと、あいつはあいつだ。本人がそれで良いのなら問題ないと思う。その言葉に嘘はない。
でも友人の言う通り–––
本当は良くないのだとしたら?
彼が空を見ながらする、何かを懐かしむような、寂しそうな表情が脳裏をよぎった。
–––あぁ、そうだったのか。
彼はなにか悲しい出来事を思い出してあんな表情をしているわけではないのだ。
自分は複雑な家庭ではないから、その点において彼の気持ちを完全に理解することはできないだろう。
でも、自分だからこそ、分かることもある。
空が好きな、自分だからこそ。
彼も、空が好きなのだ。
彼が懐かしむ“何か”は、青空なのだと直感した。
そしてどうやら、それは僕だけではなかったようだ。
やっぱりお前もそう思う?という表情でこっちを見る友人と顔を見合わせて笑う。
彼が色をなくした理由は、僕たちには分からない。
これ以上何も見たくないという彼の願いだったのかもしれない。
彼の住む世界に綺麗なものを見つけられなくなって、それならいっそ、色などいらないと考えたからかもしれない。
それでも彼は空が好きで、多分まだ、色を捨てきれていないのだろう。
もしもそうならば、僕たちが空の、色の美しさを言葉にしよう。
見えなくても、伝わるように。
綺麗なものはまだあるのだと知ってもらうために。彼が色を取り戻したいと願ったときに、
その助けになれるように。
そしていつか、3人で一緒に空いっぱいに広がる“青”を見よう。
空と少年 松本碧 @matsuuuu03
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