2.友人と色(1)
辛いときには、空を見るんだ。お前の悩みは全て、青い空が吸い込んでくれるから。
それが父の口癖だった。
空を見るのが好きな父の影響で、自分も空が好きになった。父は青空だけでなく、曇り空な雨の美しさも教えてくれた。
変化するからこそ、どの空も美しいと思える。春も夏も秋も冬も、毎日空を見上げた。
そうして中学生になり、気の合う友人が2人できた。1人は同じように空が好きで、空の話でよく盛り上がった。
もう1人には、曇り空しかなかった。彼は色の判別が出来ず、世界が全て灰色に見えているそうだ。本人が原因は不明だと言っていたが、精神的なものが起因していると担任がこっそり教えてくれた。どうやら複雑な家庭環境で育ったらしい。そんなことを教えて良いのかと尋ねたら、君たちならきっと、彼の色を取り戻せると思ったんだ、と言われた。
自分は青空が好きだ。
雲がひとつもないときには、その青さに目が眩みそうになる。見上げていると、悩みどころか体ごと吸い込まれそうだ。たまに、吸い込まれてみたい、と思うことすらある。
でも、自分にとって特別なあの「青」は、彼にとっては「灰色」なのだ。曇り空も美しいことを知っているから、それが彼にとって本当に悪いことなのか、自分には分からない。
彼が自分の世界に灰色しか存在していないことを悲観している様子はなかった。色がないこと自体は、だめなことでも、悪いことでもない。大切なのは、その人自身がどう捉えているかだ。大切な友人だからこそ、彼の気持ちを第一に考えたかった。だから、無理に彼の色を戻す必要はないと思った。
彼の空は青くはなくても、彼だけに見えている、少しずつ変化していく彼だけの空が広がっているのだろう。
そう考えて少し経ったころ、空が好きなもう1人の友人が訪ねてきた。
「なぁ、なんであいつ、色の判別ができなくなったんだろうな。」
さぁ、と僕は答える。
「複雑な家庭だったらしいし、色々あったんだろう。人に触れられたくない部分もあるだろうし、あいつが良いならそれで良いんじゃないか。」
確かにそうだな、と答えた後、友人は言った。
「でも、あいつは本当にそれで良いのかな。」
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