第55話「その後の伏見夫妻」

「そういえば貴方、私の事好きってちゃんと言った事あったっけ?」



「えー、そんな事、今更言わなくてもわかるじゃない♡じゃなきゃ結婚なんてしないよ」



さらさと限竜が結婚してから早いもので2ヶ月近くが過ぎ去った。


限竜は無事に退院し、少しずつだが普通の生活を送れるようになってきている。



今日はさらさの方の仕事がオフだった為、久しぶりに朝から夜まで夫婦水入らずで過ごす事が出来た。



限竜はさらさの足の爪にペディキュアを塗りながら、やけに可愛い仕草で微笑んだ。



「ちょっと、そういう事は大事なんだから、しっかり言いなさいよ!私は言ったんだし」



さらさはムッとした顔で限竜を軽く睨みつける。

しかし限竜の方は何故か遠い目をしたまま、さらさを見ようとしない。




「………………………ふっ」




「何よそれ。ふって何よ。今何て思った?正直に言いなさい」



さらさに詰め寄られた限竜はボソっと呟いた。



「くそだりぃ……です」



「バカっ!正直過ぎるのよ!あんた本当にバカじゃない」



「いや、バカバカって蓋開いちゃいそうな勢いで言わなくても……。それに正直に言えって言ったの更紗だし」



限竜は慌てて取り繕うが、さらさの機嫌はすぐには良くならない。


すると限竜は困ったような顔をしながら、さらさの方を向いて、その背に優しい声をかける。



「あー、その。好きだよ?更紗。こんな俺をパートナーに選んでくれて感謝してる。いつもキミを想ってるよ」



そう言って背後から抱きしめた。

その途端、カランとマニキュアの瓶が床に転がった。



「バカ。最初から言いなさいよね」



「俺の好きは安売りしないのー♡」



そう言って限竜はさらさの頬に口付ける。


出会って結婚するまでが本当に短かった二人はこれから互いの事を知っていく。


それは宝探しをするようにワクワクするものだとさらさは思った。



「ね、今日は一緒にお風呂入ろうか?」



さらさはドキドキしながら限竜へおねだりするように聞いてみる。



「えー、それはやめとく。風呂は一人でゆっくり入りたい……ぶはぅ?」



言い終わらない内にさらさの踵が限竜の顔面にめり込む。

あまりの痛さに悶絶する限竜。



「今日は怜と一緒に焼肉でも食べてくるわ。あんたはレトルトカレーでも食べてなさい!」



すると何故か限竜の顔が輝いた。



「え、いいの?やった。マジ?いやぁ、久しぶりにチープでジャンクなもの食べたかったんだよね。しかも一人の時間まで持てるなんて。今初めて更紗の事好きって思ったかもしんな……え?」



その後、限竜がどうなったかを知るものはいない。


ただ、まぁそれなりに二人は喧嘩しながらも仲良しではあるようです。

















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