第36話「お似合いな二人」

「そういえばさぁ、みなみんってグラビアとか写真集とか水着の写真少ないよね」



ここは夕陽宅。

いつものように貴重なオフをみなみと二人きりで過ごそうと料理等を張り切って準備していたら、お馴染みのお邪魔虫、笹島がやって来たのだ。


遠慮を知らない笹島はこうしてリビングで自分の家のように振る舞い、夕陽の料理が出来るまでみなみと雑談をしている。



「あー、あまり話、来ないよ。多分体型的に映えないし、需要ないんじゃない?」



そう言ってみなみは自分の腰の辺りの肉を摘んでみる。



「自虐ダメだよ。みなみん!去年のカレンダー、すげぇセクシーだったじゃん。怜サマの次の次くらいに」



「持ち上げてから落としてくれてありがと。でもアレ、ほぼ私をモデルにしたCGだよ。肌の色も違うし、胸も谷間強調する影も入ってるし、ウエストのくびれも本来あそこまでないからね」



「え、まじぽよ?」



「そ。まじぽよ」



そう言ってみなみはポテチをパリンと噛み砕く。


こんな節制も何もない我儘自堕落な間食三昧であのボディは嘘だろう。


キッチンでパスタを茹でながら、夕陽は内心そんなツッコミをしていた。



「いつもね、私だけ衣装が入らなくてスタイリストさんに怒られるんだ〜。お尻がつかえて全然入らないの。採寸の時は大丈夫だったのにね。不思議」



「うへぇ。みなみん、ちょっとぶっちゃけ過ぎじゃん。でも確かにポテチの魔力はパないわ」



そう言って笹島も腹部を気にしつつ、ポテチを摘む。



「だよね〜。ポテチとコーラ!最強かよ」



「あはは。それにビールの美味さに覚醒したら肥満ルートまっしぐらだね」



そして二人はコーラとビールの缶をカチンと合わせ、一気飲みをした。



そんな二人ののんきな笑い声を聞きながら、夕陽は頭を抱えた。



「お前らなぁ、さっきから黙って聞いてりゃ随分な事言ってるな」



「あ、夕陽さん。いたの?」



「誰の部屋だ!誰の」



夕陽はムッとしながら、ペペロンチーノとサラダをテーブルへ置いた。



「おーっ、待ってました♡」



笹島はウキウキしながら人数分のカトラリーを持って来ると、早速それを口にした。



「美味っ!いつもながら最高だよな。大将のまかないは」



「…調子いい奴。お前ら、少しは節制しろよな」



ため息を吐いて夕陽も座り、食事を始める。



「そういえば夕陽さんはスリムだよね。特にジムとか言ってないし、ビールも飲んでるのに」



みなみがペペロンチーノの鷹の爪を綺麗に除けながら夕陽の方をチラリと見る。



「俺はこれでも気を付けてはいるぞ。酒量もコントロールしてるし、食事も脂身は控えてる。日常生活でも出来るだけ階段を使うようにしている。一応仕事で人前に出て交渉や打ち合わせをするからな。相手に外見の印象でだらしないと思われたくない」



「へぇ。若いのに感心だね」



「俺より若輩に言われたくない台詞だな。というかお前、それでもアイドルかよ」



そう言って夕陽は皿の縁に避けたみなみの鷹の爪を再び彼女のパスタに戻す。



「あー、何するの」



「一緒に食うと美味いから。少しは脂肪も燃焼するかもしれないぜ」



「うーっ。夕陽さんの意地悪」



みなみは恨みがましく夕陽を睨んだ。



「しかしダイエットかぁ…。俺も何とかしたいところだなぁ」



笹島は再び腹部をギュッと摘んだ。



「お前ら明日から時間ある時に走れよ」



「えー、無理。そんな時間あったら寝たいです」



「同じく!」



「……お前らマジで似てるよな。いっそお前らの方がお似合いなのかもな」



夕陽はげんなりと肩を落とした。


二人はこのまま肥満へのルートを突き進んでしまうのだろうか。

何だか本気で心配になる夕陽だった。




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