第24話「世界よ、私に跪け!」
「世界よ、私に跪け!」
笹島宅。
真っ赤な絨毯の上に挑発的な女王様スタイルでこちらを手招きするように片手を差し出すポスターを笹島と夕陽が崇めるように見上げている。
「すげー。女王様だ」
「おおっ、これこそ神!」
「…どハマり過ぎて言葉もないな。でもなぁ、これちょっとやり過ぎじゃね?」
ずっとポスターを見上げていた夕陽だが、ふと我に返ったかのようにため息を漏らす。
「いやぁ、これこそ怜サマの真の姿!知り合いの
笹島は唾を飛ばしながら力説する。
「いや、本人から貰う手もあるだろうよ。何ならみなみを通してでも貰えると思うぞ?」
夕陽は呆れ顔で嘆息する。
このポスターは海外ブランドの腕時計の新広告で、それに何と日本のアイドルグループ、トロピカルエースの乙女乃怜が起用され、全世界同時プロモーションという話題性から一気にプレミア価値が高騰した最高のレア物だ。
その怜の恋人である笹島なら、ポスターの一枚や二枚、どうとでもなりそうなものだが、
笹島は首を振る。
「いや、夕陽。わかってないなぁ。これは俺の推しへの愛の証なんだよ。つまり俺が自力で入手する事に意味があるんだよ」
「……全くわからんな。いやわかりたくもないが」
見上げるポスターの怜は、自信たっぷりにこちらを見下ろしている。
その視線の強さに夕陽は目を逸らした。
☆☆☆
「ふふふふふっ。耕平くん、驚くだろうな♡」
その頃、笹島の家の前にはサングラスとマスクにウィッグで変装した怜が立っていた。
実はここ最近仕事が忙しく、全く笹島と実際に会えない日々が続いていた。
勿論電話やメッセージのやり取りはしているが、やはり好きな相手には毎日だって会いたいものだ。
今日はたまたまスケジュールの都合がついて、数時間だが自由になった。
そこで怜は迷わず恋人である笹島の自宅へ突撃サプライズ訪問を決行した。
「莉奈ちゃん。じゃあこっちからこっそりどうぞ」
「う…うん。ありがと。ナユタさん」
笹島と同居している彼の兄嫁であるナユタに案内されて二階のベランダへ侵入する。
ちょうど隣は笹島の部屋になっていて、ベランダで繋がっているのだ。
怜はそこから笹島の部屋へ侵入し、驚かせるつもりなのだ。
「低い柵だけど気を付けてね。莉奈ちゃん」
「うん。大丈夫よ」
怜はゆっくりと隣の部屋へ移動する。
サプライズ開始の緊張に怜の鼓動が高まる。
その時だった。
部屋から笹島の声が一際大きく響いた。
そしてその言葉に怜は耳を疑った。
「あー、怜サマはやっぱ真の「女王様」だな。俺、怜サマにヒールで痛めつけられて床を這い回りたい♡」
「バカか。お前は」
どうやら部屋にはみなみの恋人の夕陽もいるようだ。
二人は相当仲がいいのか、大抵はいつも一緒にいる。
しかし今問題なのはそこではない。
「なっ…何なのよ、それ!」
怜は顔を真っ赤にして唇を噛み締めた。
続く。
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