第11話「課金は計画的に•序章」
アイドルグループ「トロピカルエース」にはスマホゲームが存在する。
その名も「無人島脱出!トロピカルエース」
という脱出ゲームをベースにしたアプリだ。
ユーザーの間ではトロピカルエースにサバイバル要素が加わった事から「トロサバ」という、何とも生臭い通称で親しまれている。
何故か東京で歌番組の収録をしている最中、突然何者かに拉致され、無人島へ送られるトロエーのメンバー達。
彼女たちは数々の謎を説きながら、ガチャで揃えた道具を駆使して無人島から脱出を目指すゲームとなっている。
最初はいかにもありがちな設定のアプリにDL数はあまり伸びず、数ある同じ趣旨のゲームとして埋もれていくだろうと思われていたのだが、ある時期から急に方向性を変え、やや際どい衣装を纏ったメンバーのカードで島の外敵から戦う要素を盛り込むようになってきたのだ。
つまりは課金を煽る要素が加わったという事だ。
ここからテレビCMやコラボ企画等のタイアップが盛んになり、一気に知名度が上がった。
現在、そのゲームにどハマりしている男がいた。
笹島耕平(24歳、独身、彼女半永久的に無し)だ。
「うわぁ、またエナちのSSRとみなみんのSRだー。怜サマのUR、俺のスマホには実装されてないんじゃね?」
スマホを乱暴に放り出し、笹島はパタリと床に突っ伏した。
「もう六万も突っ込んだのにまだ怜サマお迎え出来ねぇ…怜サマ、どんだけツンなのっ」
「お前、バカだろ。そんな何も残らないモノに金使って…」
横でピザを摘む夕陽はため息を吐いた。
「そういう夕陽はやらねーの?トロサバ」
「俺はそういうの苦手っつーか、興味ないな」
「マジで?みなみんのちょっとエッチなカード、愛でたくないの?」
「あいつにそんな要素あるか?つか、そんなのわざわざスマホで集めなくても、家で見ようと思えばリアルで見れるし」
「うーわー、出たよ。リアルアイドル彼女がいます的マウント」
夕陽は顔を顰めた。
「そんなマウントあるか。それにあいつ、全然家だとアイドル感ないぞ。色気なんて欠片もないし」
「またまたまたぁ、カレシにだけしか見せない特別なみなみんを見られる唯一の男のク•セ•ニ♡」
「キモ過ぎんだろ」
「ぶはぁっ!」
夕陽に蹴り飛ばされ、笹島は後ろに転がる。
アフロがまるで毛玉のようだ。
「ちっ…、この機会に夕陽もトロサバやっちゃいなよ。それ、インストール。早くID入れてちょ」
「わっ、こら。勝手に何するんだ。入れねーよ」
笹島は夕陽の尻ポケットからスマホを勝手に抜き取ると操作を始めた。
思えばこれが泥沼の始まりだった。
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