ペット

フジサワ リョーイチ

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僕は高橋あゆむ。

しがない小説家。

と自分で言うことでなんとか理性を保ってはいるがただのフリーターだ。



名案だ!とペンを走らせ短編を書き終えると編集者に持ち込み却下される事を繰り返すだけの簡単なお仕事をしている。

今年で27だというのに物書きをやめられない。

周りの同級生は、やれ結婚だの、やれ子供が寝付かないだの自慢じみた“幸せ愚痴”をSNSに投稿している。

それを見る度に自分の孤独さに拍車がかかる。


「報われない」という言葉はきっと僕のためにあるのだろう。


一緒に暮らしていて『ずっと一緒』に居るはずの彼女は僕の怠慢さに愛想をつかし離れていった。


なので今はペットと僕の二人暮らしだ。

悪くない。寂しさを代償に自由を手に入れた。悪くない。


そう思うしかなかった。



なのに。





…最近ペットの体調が悪い。


勘弁してくれ。

せめてペットくらいは順調にほのぼの生きててくれ。

癒やしの対象でいてくれ。


一度病院に連れていったが「ストレスですねー」という当たり障りない診断でお茶を濁された。


でもそれは本当のようだった。


実際、餌をあげてもうまく食べないし、何より常にぐったりして元気がない。


僕の家に居てどこにストレスが溜まるんだよ!という愚痴は置いておいてペットですら僕の調子の悪さがうつってるらしい。



彼女だけじゃなくペットにすら愛想をつかされたのか?

勘弁してくれ。これからまだまだ楽しいことが待っている。そう思いたい。

想像の中の僕は小説家として人気なはずだしまだまだ可能性があると自負している。


しかしそんな自信も現実というやつのせいでボロボロになる。



バイト終わりに編集者のダイレクトメッセージに凹みコンビニで缶ビールを買っては家で自暴自棄になる。

僕にとっての小説や、その意気込みはその程度だった。



家に帰り、ペットの好きな食べ物を口の前に持っていく。

小さい口を開けアグアグとゆっくり咀嚼する。それを見ながら餌を与えるのが何よりの楽しみだった。


今日も嫌なこと、辛いこと、報われない事を小説に昇華させて生きていく。



きっと、それだけが僕における幸せなのだと。

思うしかなかった。







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「引き続き都内のニュースです」

「東京 八王子市のアパートで階段の一部が崩れ落ちて20代の男性が死亡した事故の件ですが、アパートの一室で成人女性の遺体が発見されたことについて新たに専門家の見解を聞きたいと思います。」



「専門家の山本さん、この拉致監禁事件についてどのようにお考えでしょうか」

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