第12話川越 今福 明見院の枝垂れ桜

明見院のしだれ 平成十三年三月二十七日


 中院の枝垂れ桜の子供が今福中台の明見院にあるという事を


桜の開花情報で知った私は出かけることにした。


寺の名前しか分からず地図を見ても良くわからなかったが


近くまで行ってみる事にした。


バス停の今福中台のあたりでうろうろするが分からないのでパン屋さんで聞く。


一本、道が違ったようだ。


住宅街の中の狭い道を走ってやっと見つけた。


駐車場は数台分あるが空いている。


道を渡って門を入るとすぐ左手に枝垂れ桜は見えてきた。


中院の種とあってなるほど姿が良い。


少々小ぶりではあるが中院で見るのと違って


ほかに何もさえぎるものがないのでスケッチしやすい。

ただ、難は後ろが墓であるということ。


墓石や塔婆が後景となってしまう。


絵の場合は省略すれば良いが写真をとりたい人は苦労するだろう。


墓は檀家さんの墓なので勝手に入る訳にも行かず、


向こうから眺めることが出来ない。


大体、墓の中に入って絵を描いたり写真を撮ったりしたら


罰でも当たりそうである。


本堂の所に休憩所が設けてあり甘茶の入ったポットが置いてある。


湯飲みが置いてあって ご自由にどうぞと書いてある。


遠慮なく頂いて喉を潤す。


周りに自動販売機も無いようなところなのでこれは助かる。


甘茶を頂き、桜を見に来た老婦人と話をしながらゆっくりと花を見る。


なんだか心がゆったりとする。


桜の花って不思議な力がある。


まるで恋人に出会ったようにどきどきとしたり、


冬の陽だまりの中で縁側に干した布団の中で転寝をしたときのように心が安らいだり


、バスケットのかごに一発でボールが入ったときのように興奮したり・・


ぬるま湯につかっているときのようにゆったりとしたり・・・


その時々に私の心を捕らえて離さない。


夜はライトアップをしているらしいが、お墓の中で眠っている人を


起こしてしまいそうなので霊感の強い私は遠慮しておこう。




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