第5話 とんとん拍子で皆ハッピー
俺は三年生になった。モモーナの件も無事に片付いて、のんびり婚約者探しを続行中。のんびりしている余裕はないんだけどな!
最早避けられている気しかしない。心が折れそう。
モモーナは今も在学中。男性陣への気を持たせる様な言動は沢山見られたが、直接的に何かをした証拠は無かったからだ。
事情聴取みたいなのは行われた。慰謝料の発生とか、問題あるからね。
モモーナは、彼らと一緒にいた貴族向け商会の後継ぎ息子が本命で、その為にも高位貴族の不興を買うような言動は出来なかったと弁明した。
デートの誘いも高位貴族だと思うと、嫌だったけれど断れなかったと泣いたのだ。貢いで貰っていたことなど、鋭い質問もされたが見事に躱しきったそうな。
密かに見学していた母上は、証明は出来ないけれど、あれは絶対に嘘ねと断言していた。根拠を聞いたら、最終的には女の勘と言われた。
妙に納得出来てしまった俺。今は大人しくしているが監視対象にはなっている。
弟も入学したが、同い年のカリーナは入学して来なかった。どうするつもりだろう? そろそろ病気療養が終わらないと、本格的に将来に関わってくると思うのだが。
あの一件以来、当然だけどカリーナと連絡は取っていない。情報も入ってこず、弟とは更に疎遠になった。両親との夕食でもほとんど見かけなくなった。
弟も同罪だと思うので、カリーナにだけ厳しい罰とかだと微妙だなと思った。
城に戻った時に母上に質問したら、怖い笑顔が帰って来た。怖すぎて何も聞けなかった。
俺は今は知らなくていいことなのだろうと納得することにした。隣にいた父上までビビっていたので、聞ける訳がない。
人の婚約者だったのでリストには無かったが、公爵次男の元婚約者、伯爵令嬢フィリアナと恋仲になり、色々時間はかかったが婿入りすることになった。
モモーナへの対応やらで気に入ってくれたらしく、猛烈アピールをして頂いた。幸せ。
俺の記憶力が致命的に悪いことを馬鹿にせず、フォローしてくれる優しい女性だ。両親にはかなり難色を示されたが、ケビンが協力してくれた。ありがたや。
俺が昔から王太子を弟へ譲ろうと考えていたこと、更に人の顔と名前を覚えられないことで、問題があると本人も気が付いていること。
実例を挙げて説明してくれたらしく、王太子になった後も将来苦労し続けるだろうと両親を説得してくれたそう。
必然的に王太子は弟に確定かと思いきや、父上の年の離れた弟が王太子になることになった。父上とは仲が良く、純粋に父上を支える為に大公となって城に残っていた。
俺も地方視察へ付いて来て貰ったり、付いて行ったりと兄上の様に思って慕っている。
弟の将来はどうなるのかと聞いたら、実は弟はカリーナの一件の後、止められていたにも関わらず、密かにカリーナと連絡を取り続けていたそうな。
すげぇな。母上相手に隠し通せるとでも思ったの? 俺には絶対無理。弟も無理だったけど。
両親も鬼では無い。機会は与えるつもりだったと言う。二人がきちんと反省して約束を守っていれば、それでも二人が相思相愛なら。
けれど二人はそんな両親の思いを裏切り続けた。
母上はやはり早い段階で二人が連絡を取り合っていることに気付き、フォード卿と連絡は取りつつも、敢えて二人を放置したみたい。
最初は連絡を取り合うことに難色を示していたカリーナも、そのうち積極的に連絡を取るようになっていったそうだ。母上は鼻で嗤って言った。
「流されやすい女性が王族に関わるなど、笑止千万。誰の子どもを身籠るかわかりはしない。ディーハルトの自業自得で、王族の血を絶やすわけにはいかない」
納得。そう言われれば、確かに無理だわ。その後、両親にそんな女性を選んでしまったことをひたすら謝られた。
横でケビンが非常に満足そうにしていたので、察した。両親を説得するネタに使ったもよう。
王太子の発表は、俺とフィリアナの結婚式の招待状を配る日になる。それまでは、この事を絶対に口外しないように言われた。
横やりとか横やりが色々あるらしい。
俺とフィリアナは、婚約と同時に卒業一年後には結婚することを発表することになった。
なので、周囲はフィリアナの家が養子を取ると思っている。親戚連中からのアピールが凄くて父親が困っているとフィリアナに聞いた。何かごめん。
夫婦揃ってチーズが大好物だと聞いたので、定期的に様々な地方のチーズを差し入れてみた。知らないチーズも多かったらしく、大喜びしてくれている。良かった。
婿入りするのだし、義両親との関係も良好であることに越したことはない。
結婚の準備は女性陣が張り切っているので、俺は楽かと思ったらそんなこと無かった。
フィリアナの所に婿入りするので、人脈とかお勉強とかに必死。ケビンがいなかったら泣くところだった。公務も大幅に減らして貰えたので、必要最低限は何とかなりそう。
ケビンには俺の婿入り後、文官に戻れるように手配する話をしたのだが、結婚していた俺の専属侍女アンナと一緒に伯爵家についてきてくれることになった。本人たちの意志で。
やヴぁい、幸せだわ。
自分の事で精一杯。卒業した後にようやく招待状の送付準備が終わって、やっと王太子についての発表が行われた。その時に、弟が国の預かりになっている男爵領を賜ると知った。
ケビンに説明を求めると、カリーナは侯爵家より除籍されて平民になるが、その立場なら二人は結婚を認められるそうだ。
怒っていた割には、二人の結婚を認めて領地まであげるのは意外だった。結局親は子どもに甘いのだなぁと思った。
ケビンやアンナは不満そうだったけれど、まだ成人もしていないし、それでいいとは思う。この考えが今世ではかなり甘い考えだと分かってはいるが、前世の記憶があるとどうしてもね。
十八歳で男爵領とはいえ領主というのは異例の早さにはなるけれど、弟とカリーナなら何とかするだろうと何となく思った。
無事に結婚式が終わって、毎日俺の妻が可愛いと真剣に思っていた。実際に可愛いし。王太子になった叔父上に地方視察へ連れて行かれたり、ケビンが領地経営で手腕を発揮したり。
馬鹿だったけど諦めずに頑張ったことで、周囲に助けられながら幸せです。
頑張って良かったよー。
小説通りにはならなかったけれど、弟とカリーナも結婚できたし、皆幸せでハッピーエンド!
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