第4話 婚約者が決まる気配なし
二年生。結局モモーナに引っ掛からなかったのは、ケビンに憧れている内政長官の息子だけ。ケビンの辛辣な一言で目が覚めたそうだ。
お陰でここだけは、婚約者との関係修復が間に合った。自分より優秀な婚約者から逃げたい気持ちをモモーナに掴まれたらしい。
他の男どもは、誰が何を言っても無駄だった。自分たち有責で婚約解消をお相手の令嬢側へ申し込むよう度々勧めたが、それもしようとしない。
ここ、身分制度のある世界。俺王子。王子の話を無視するって何故だ。意味がわからん。
更にこの世界、男性の女遊びは許容されがち。女性側から今の状態で、婚約解消に持ち込むのはかなり辛い。成功しても、何故か女性側が非難される。
結婚前から愛人を許容しろなんて、どんな聖母だよ。いいとこのお嬢さんたちばかりだし、王族や側近候補まで程度には婚約者がいるが、他の人には婚約者がいない状態。
このアホたちから解放されれば直ぐにでも次が見付かる。その状態で許容するのは苦痛でしかないと思う。女性の扱い酷くない?
何か将来有望な令息を早い段階で押さえているのだし、令息の恩恵で良い立場へいけるのだから我慢すべきとか何とか。
こいつらが将来有望? 無いわー。俺の側近には絶対しないぞ。空気も読めないから、役人も無理じゃないかな。
婚約者のご令嬢たちのご機嫌をとりつつ、自分の婚約者探しも続行中。俺が馬鹿過ぎるのと忙しいのとで、顔と名前が一致するのに半年ちょっと。
呆れられたのか距離が縮まらない。正直ヤバい。
未婚の王太子?そんなん無いわー。
ついでに王太子も無いわー。
夏休み目前の今日、側近候補の婚約者たちに集まって貰った。何故か司会進行は内政長官の息子の婚約者、内政長官の息子は書記だった。
逆かと思ってた。二人の時は知らないけれど、ちゃんと男を立ててくれるタイプなのに、俺の前で立てなくていいの? 俺、王子よ?
「忙しい中集まって貰い、申し訳ない」
女性陣の顔が真剣過ぎて、ちょっと怖いよ。司会進行役に任せて、それぞれの現状を確認。
彼女たちには注意をしているが、彼らが言うことを聞かないことは以前から伝えていた。
今回は、俺の側近候補から完全に外されたことを証明する書類を渡す予定。これは俺が彼らを入学前に側近に選ばなかったから起こったこと。
側近がケビンと補佐一人のままなのはあり得ないので、彼らは将来側近に選ばれるべく、勉強を頑張っていたらしい。らしい、になるのは友人としてはあまり気が合わなかったから。
実はさほど仲良くしていない。何て言うか、プライドが高くて面倒臭い性格だったからだ。
話を聞いたらやっぱり何の改善もされていなかったので、書類を渡すことになった。
令嬢側からの婚約破棄に利用出来るよう、個別で事細かく側近候補から外した理由を記載している。
要約すると、あんたたちの息子、性格やら私生活に問題多過ぎて側近にする気は微塵も無いよ。
国政に関わりたいなら自力で役人になってね。難しいと思うけど。みたいな内容。当主との揉め事回避に必要だった。
父上に俺が提出したのと同じ物。これで各家の当主へ父上が通達してくれ、問い合わせの窓口にも父上の部下がなってくれる。
ちゃんと彼女たちに渡しても良いという許可も貰っている。証拠集めもばっちり。
これだけの証拠があれば、令嬢にかなり有利な条件での婚約破棄が可能になるはず。
王子に見限られた令息なんて、どうしようもないからね。長期休暇中に当主へ渡せるように準備した。
「お聞きしてもよろしいでしょうか?」
「答えられることなら答えよう」
公爵次男と婚約している伯爵令嬢だったかな? 直接会うことが少ないので、覚えられていない。
「通常であれば側近は十歳前後には決められて、将来の為に共に勉強すると聞いております。彼らが候補のままなのは、彼らに何かが不足していると、当時からお考えだったのでしょうか」
ちょっと予想外の質問だったけれど、正直に同年代の側近そのものに疑問を持っていたからだと答えた。
その後もいくつか質疑応答があり、全員が満足そうな顔をしてくれたので、ほっとした。無事に済んで何より。
騎士団長長男の婚約者、辺境伯令嬢は夏休み中に婚約破棄が成立。辺境伯令嬢は今後の事を考えていて、騎士団長長男の不誠実な行動を大人たちに一切報告していなかった。
不誠実を嫌う騎士団長も、娘をコケにされた辺境伯も激怒。騎士団長長男は即刻学校の退学手続きがとられた。後継ぎにはなれないだろう。騎士での出世も絶望的。
そもそも騎士は誠実であれ的な暗黙の了解がある。護衛中に女漁りとか、女性問題を持ち込まれても困るからだ。後は賄賂とかね。とにかく清廉潔白が好まれる。
王都の騎士団と辺境伯の仲を深めて、より深い連携を取る為の婚約だったのにそれが台無しになった。信頼回復をどう行うかが今は問題になっている。
公爵次男の婚約者、伯爵長女も夏休み中に婚約破棄が成立。次男は親が持っている伯爵位を自分が継げると思い込み、モモーナと婚約出来るとアホみたいに喜んでいたそうだ。
残念ながら王家に睨まれた次男に対して、公爵にそんなつもりはなかった。価値だけで判断する公爵は、息子の価値にも厳しかった。
余計な出費は不要と、公爵も次男の退学手続きをした。程なく除籍されて放逐されるのが決定的で、知らぬは本人だけっぽい。
伯爵長男と子爵令嬢の婚約破棄は揉めていた。伯爵家側はお金目当てだったのもあり、今までの借金、慰謝料が払えないのだ。
子爵家側から報告を受け、王家御用達の弁護士が仲裁に向かった。おそらく借金返済も含めて、領地の半分を売ることになると言われている。
純粋に授業料が払えなくなるので、こちらもおそらく退学になると思う。
商会の息子には、元々婚約者もいなかったので放置。モモーナとくっつこうが問題なし。ただ、大分モモーナに貢いでいる様なので、二人の先行きは不透明だ。
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