第33話 叔母様の真実
僕は綺麗に落とした王の首を持ち、サタンに向き直る。
「君はどうするの?」
そう聞くとサタンは先ほどまでのニタニタ顔を辞めていた。
「私は召喚者が居なくなったので晴れて自由の身です」
「そう、良かったね」
そう言うとサタンは徐に片膝をついた。
「もしも私の願いを聞き届けていただけるのなら、あなた様の
「
「いえ、滅相もありません。私はあなた様の仄暗い魂に惹かれたのでございます。魔物とは強い方に忠誠を誓うものなのです」
「じゃあ、より信じられないな。僕より強い人間なんて五万といる」
「いえ、私の主となるお方はあなた様しかおりません。聖女で生まれたのにも関わらず、その環境のせいで人間的に言えば冷酷で残虐な行いが平気で出来てしまう。その相反する魂に魔力や魔物は引きつけられてしまうのです。もはやあなた様は聖女とは真逆の者になられたのでございます」
「聖女とは真逆? もしかして、妖精が会いに来なくなったことと何か関係があるの?」
「ええ、もはやあなたは魔の力が強くなるあまり聖女の力が少なくなってしまっていたのでしょう。そのせいで、妖精が見えなくなった。あなた様はその少ない聖女の力を使い果たしてここまで来たのです。普通の聖女であったなら聖女の力が体から無くなったと同時に死んでいたでしょうが、あなた様の魂に従いたがる魔力が、あなた様に入り聖女の力の変わりをしているのです」
「そうか」
僕は妖精さんたちのおかげでここまで生きてこられた。聖女の力がなくなった今、二度と会えなくなると思えば寂しい気持ちが大きいが、妖精さん達が消えていなくなったわけではない。
僕が見えなくなっただけなのだから。きっと近くで見守ってくれているだろうと思えば、これからも頑張れる気がした。
「私の忠誠を受け取っていただけませんか?」
サタンは相変わらず片膝をつき不安そうにそう尋ねてきた。
「わかった」
そう言うとサタンは嬉しそうに顔を上げた。
僕は王の首をいったん床に置いてから口を開いた。
「ところで尋ねたいんだけど、僕の兄と叔母はどこにいるのかな」
「ああ、王太子ならおそらく私を呼び出すための儀式の生贄にされ、すでに亡くなっています。それなりの悪魔を呼び出すためにはそれなりのものを生贄に捧げなければいけないと思ったのでしょう。あなた様のお母上の妹君は地下の牢に入れられています」
「牢? なんで?」
「さあ。私が呼び出された時にはすでに牢に入れられていたようでございます」
「じゃあ、そこに案内して」
「はい。こちらです」
サタンがそう言うと、次の瞬間には牢の前にいた。
僕がさして驚きもせず、目の前の牢の中を見ると、中には確かに叔母様の姿があった。叔母様は急に現れた僕たちに驚いて、そしてすぐに僕がロイアナであることに気がついたようだった。
「ロイアナ……。良かった。元気でいたようで」
おばさまは涙ながらにそう言った。
「叔母様、どうしてこのような所に?」
そう尋ねると叔母様は話し始めた。
「あなたが、帝国に嫁いで行ってしばらくしたら、この国は大変なことになった。私は、あなたがこの国にいる間から、ロイアナをもっとまともに扱うよう王に進言していたから、どんどん国がダメになっていく最中に『お前がロイアナを嫁にやることにもっと反対していれば!!』とお怒りになって罪に問われたの」
「まともに? でもあなたは僕に毒入りの菓子をずっと食べさせていたじゃありませんか」
「ええ。王族は皆、ああして少量の毒で体を慣らして、いざ毒を盛られた際に重症にならないようにしておくものなの。でも、あなたの父親はあなたにだけはそれを行わなかったの」
「そんな……」
「私は、姉の……あなたのお母さまの、大事な娘であるあなたが、他国に嫁ぐことになった時のために、あなたの幼い時から毒入りのお菓子を食べさせた」
「叔母様、僕はあなたにまで嫌われているのだと思っていました」
「私は、ロイアナの事を実の子のように愛しているわ。何せ皆の言うように私にそっくりなのだから」
「叔母様……」
「最後にロイアナに会えて本当に良かった。どうしてここに居るのかは知らないど、早く逃げた方がいいわ」
「……最後?」
「ふふ。私は死刑が決まっているのよ。明日執行なの」
「なぜ死刑なんです」
「あなたの義母様とエリザベスの悪行を全て背負わされたのよ。でもいいのよ。ロイアナが生きた。それだけで十分よ」
「叔母様……。叔母様の死刑は取り消しです。王は、先ほど僕が殺しましたので」
「え」
「叔母様、お願いがあります」
「え、ええ。何かしら。ロイアナのお願い事ならなんでも叶えてあげたいけど。私にできることなら……」
「叔母様がこの国の王になっていただけませんか」
「……それは無理よ。私の王位継承権は3位よ。周りが認めないわ」
「第一位は僕の兄、第二位はエリザベス、でしょう?」
「ええ」
「じゃあ、大丈夫です。その2人はもうこの世に居ませんから」
僕のその言葉に叔母はさすがに引きつった顔をした。でも叔母がなんとか絞り出した言葉は了承だった。
「じゃあサタン、叔母様と僕をさっきの部屋まで連れてって」
「はい」
そう言うと、また一瞬で王の死体が転がる執務室までついた。叔母はかなりびっくりしているようだった。
先ほど、失神させた義母が目を覚ましたようだったが後ろ手に縛られた縄を必死に解こうとしている最中で僕たちが現れたので腰を抜かした。
「こ、殺さないで! 謝るから! ね!」
「じゃあ、早く謝って」
「ご、ごめんなさい。今までのこと!」
「いいよ」
そう言うと義母はほっとしたように笑った。
「今は殺さないであげる。まぁ叔母様に被せた悪行を自分で償ってもらうけど」
その言葉に、義母は微笑んでいた顔を引っ込めた。
「それと、ここに居る叔母様にこの国王を務めてもらおうと思ってるから」
そう言うと義母は理解の限界に達したのか短い悲鳴を上げた後、気絶した。
「叔母様、あとはよろしくお願いします。僕は復讐と帝国のためにこの国にこいつらを殺しに来ただけなので。それでは叔母様、お元気で」
「ロイアナ……」
僕は王の首を拾い上げて持つと叔母様に別れを告げた。
「サタン」
「はい」
サタンの名を呼ぶとすぐに移動を行ってくれた。たが運ばれた場所は王都の近くの森だった。
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