第27話 研修
朝、待機室に出勤すると他国へ書簡を受け取りに行く任務を言い渡された。研修ということでビビットさんとシルバーさんと3人で向かうことになった。
「往復で1週間ほどかかる任務だけど、大丈夫そうかい?」
先生は心配そうにそう聞いた。
「もちろんです! がんばります!」
「陛下は過保護すぎですよ! 何たって俺たちと行くんですから!! 大丈夫に決まってます!!」
ビビットさんが横で叫ぶものだから右耳の鼓膜が破けそうだ。
「そうです! 俺たちは全身全霊で任務に当たって砕けちるぜ!!」
左隣では初めて会うテンションの高いシルバーさんが叫んだ。
「砕けちるのはダメじゃないですか」
2人のテンションの高さを見て引いてしまった僕がそう言うと2人とも豪快に笑った。
寮に帰り1週間分の準備をして集合場所であるコールライト国の入り口に行くとすでに二人とも来ていてビビットが筋トレをするのをシルバーが暑苦しく応援するという地獄絵図を繰り広げていた。
「お待たせしてすみません!」
「気にするな! じゃあ行こう!」
ビビットが滴る汗を拭いながらそう言い僕たちは目的の国へと歩き出した。
「走ったりしないんですか?」
「いや、走ったり歩いたり! 走りっぱなしは疲れるだろ!」
シルバーさんがそう答えた。
「お2人も疲れるなんてことあるんですね」
「あったりまえだろ!」
「ところで、僕今から行く国の名前も場所も知らないんですがどこにあるんですか?」
任務を聞く際、2人の騒音で聞こえなかったところを聞くとビビットさんが答えてくれた。
「今から行くのはナルター王国だ! エフテイン王国の森を抜けたらすぐだぞ! 片道3日くらいで着く!」
「エフテイン王国……」
「なんだ?」
「エフテイン王国は、今悪い噂が絶えないですよね」
「? そうなのか? まぁでも端の森の方を通るだけだし大丈夫だろ! あそこは森に入るのに許可もいらないし!」
「そうなんですか?」
「そうなんだよ! 何だか最近は災害とかに見舞われて警備する余裕もないって感じするしな! ま、もともとコールライトの人間は通ってもいいと言う契約がある」
「へー。僕、何も知らなくて」
「まぁ、俺たちも最初の頃は何も知らなかったさ!」
「時間はたっぷりある! 少しずつ覚えればいいと思うぜ!」
二人がそれぞれそう言ってくれ、有難いのだが少々声が大きすぎて耳が痛い。
それぞれ適当に世間話をしながら歩いたり走ったりしていると4時間ほどで森の入り口についた。とりあえず持ってきたおにぎりを3人で食べていざ森の中に入る。ここから先は食事も自給自足だ。進んでいるうちに食べられる草や、肉を調達するらしい。
もちろん授業で、食べられる草の勉強などはしたが実践となると意外と難しい。
「あ、これ食べられる草ですよね。確か、セリセルとか言う葉っぱで」
「いやそれはセリセルもどきもどきだな! セリセルとセリセルもどきは食べられるが、セリセルもどきもどきは、猛毒だ!」
「え、どこで見分けるんですか?」
「セリセルはここに白い点があるし、セリセルもどきは黒い点がある。猛毒のセリセルもどきもどきには何もついていないんだ」
「え! 本当だ! こんな小さな点一つの違いで猛毒になってしまうんですね」
と、こんな感じで本当に役立つ知識を教えてもらいながら進んだ。僕も役に立たないだけではなく、途中で食べられる魔獣を仕留めたりして肉をゲットできた。
「これは今すぐには食べないから干し肉にしておこう。塩は持ってきているからこの皮を剥いで肉を小さく切って塩をまぶしておく。そんでこの網の入れ物に入れてぶら下げながら歩くと乾燥できていいジャーキーになるぞ!」
「勉強になります」
「今回は往復1種間程度だから、これでいいが、もっと長いサバイバル生活になるなら精神的な面で味変はしたほうがいいぞ! 絶対にな!」
「そうだ! それは大事だぜ。真っ先に覚えた方がいい!」
「な、何があったんですか。お2人とも……」
「あれはな……。よくないよ。本当に良くねーよな」
「ロイに、いや、後輩みんなにあんな思いはさせたくないな……」
「いや、本当に何があったんです?」
そう尋ねても2人は遠い目をして答えてくれることはなかった。
それから3時間くらい歩くと少しだけ開けた場所に出たので今日はここで野宿をすることになった。
ビビットさんと一緒にテントを貼り、シルバーさんは少し離れたところにトイレ用の穴を掘ってくれることになった。そしてテントを立て終わり、3人で先ほど作ったジャーキーや、とってきた草を味噌で煮たものなどを食べて早々に寝ることになった。
「ちょっとトイレ行ってきます」
「「ごゆっくり〜」」
よかった。夜まであの大声はさすがに出さないのか。と思いながら急いでトイレを済ませた。そして少しトイレからも離れて小声で妖精さんたちを呼んでみたが、やはり現れてくれることはなかった。
「どうしたんだろう」
そう呟く声も夜の静けさに消えるだけだった。
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