第10話 クロー

「お前、俺と同じ隊だよな、特殊部隊。俺はクローだ。よろしく」

「あぁ、よろしくクローくん。僕はロイだよ」


 突然話しかけてきたのは唯一僕と同じ特殊部隊に入隊した黒目黒髪のクローという名前の通りの青年だった。


「にしても、貧弱だな。どーやって取り入ったんだ?」

「取り入った?」

「お前みたいな貧弱なのが、特殊部隊に入れるわけないもんな。これでも心配してるんだぜ? お前みたいな貧相な体のやつがやっていけんのかなーって」

「あー、そうだね。ご心配ありがとう。できる限り努力して筋肉をつけて見せるよ」

「っけ。見た目だけじゃなく、中身も貧相なんだな」


 何が気に入らないのかクローはそう言い捨てて怒肩のまま寮の方に向かって帰って行った。


「あんま気にしない方がいいぜ。あーゆー奴も居る」

「ありがとう、フェルト。僕は全然大丈夫だよ」

「お前、結構強いよな」

「そんなこと初めて言われたけど、ありがとう」


 一部始終を見ていたであろうフェルトが慰めてくれる。

 妖精さんたちは、僕が呼ばない限り塔の見張りをしてもらっているので、この場面が見られなくてよかった。見られていたらまた殺すと騒ぎ出すところだった。

 でも、と考えた。なぜ僕みたいなのが特殊部隊に入れた? それは自分でも思っていたことだ。最初こそ特殊部隊のすごさを分かっていなかったけど今は特殊部隊に密かに憧れている隊員がいることを知っている。そんな場所に、なぜ僕が。

 まぁ考えたってわからないし何にしても力が足りない。


 次の日の授業で配られた個人トレーニングの紙を見ながら授業以外の時間は全部トレーニングに回した。その紙に書かれているトレーニング意外にも気配を消して軍の内部に潜入したりして内緒話を聞いたりなど気配を消す練習もした。趣味と実益を兼ねたトレーニングだ。

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