第4話 すでに嫌われている

早朝、当然のことのように、お見送りになんて誰も出てきていなかった。


(いつまでも、聖女の力を発動させない妹に永遠に期待していれば良い……)


 私は叔母様に似て性格がすこぶる悪いらしい。直接叔母様に会ったことは無いけど、よく使用人達の噂話に上がってた。私は義母の目に入ると言いがかりを付けられたり体に跡が残るほどの暴力を受けたりするので、気配を消すのが上手くなったおかげで使用人達の噂話をこっそりとよく聞いていたのだ。


 でも、物陰からこっそりと覗いて観察した叔母様は噂の人とは違う人のように思えた。いつも1人で寂しそうにしていたけど、恐ろしく仕事のできる人のようで父王の不正を見抜き言い逃れできない形でやめさせたり、嫌がらせで置いていかれた書類の山を物凄い速さで終わらせたりしているところを良く覗いていた。


 私は叔母様が密かに好きだった。勝手に母のように思っていた。叔母様はたまに私の住んでいる離宮までこっそりと来て『絶対に食べなさい』と手紙を置いてお菓子を置いていってくれたりした。それを食べるといつも体調を崩していたけど私はお菓子はなかなか食べられない環境だったので全部食べていた。


(だから、最後に挨拶くらいして言葉を交わしてみたかったな)


 馬車の揺れを感じながらそう思った。



 途中で、コールライト帝国の馬車に乗り換えてお城に向かう。

 馬車はエフテイン王国とは比べものにならないくらい豪華なものだった。でも従者達は私のことを始めから歓迎していないような雰囲気だった。嫌いーーと態度に出されている。


 やがて馬車は、帝国のお城に付いて、そして執事らしき人の案内で王宮の脇を通り過ぎて、奥の奥まできた、古い建物に通された。その道中も全くお出迎えはなかった。

 ここでも私は、誰の目にも入らない生活になるのか。


「こちらが陛下からのお手紙です」


 そう言って執事は手紙を渡してきて失礼いたします、と、この建物を後にした。

 

ーーエフテイン王国の王女殿へ

 この結婚は政略的なものなので貴女に何も求めません。

 お好きなようにご自由にお過ごしください。

 離宮は好きにお使いください。

 使用人は連れてきたことでしょう。

 足りなければご自由に雇ってください。

 分かっているとは思いますが

 王宮には近づかないでいただきたい。

 


(何だこの手紙、すでに嫌われている……)


 使用人は1人も連れてきていない。というか私についてきてくれるような人が居なかったし。だけど、ご飯を食べるのも材料を準備してくれる人が居ないと何も食べられない。


まぁいいか。気配を消せば王宮のキッチンから何かしら食べ物をくすねられるでしょう。

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