第2話 私が聖女?

 私は嫌われ者らしい叔母様にそっくりだから頭のおかしい行動をして聖女になるはずのエリザベスを傷つけないようにと物心ついた頃には1人で離宮に住まわされていた。

 最初は使用人達も普通に私の世話をしてくれていたけど、家族の誰からも相手にされていない子供1人世話しなくても誰からもお咎めがないのでだんだんとサボるようになっていった。

 私の世話は当番制だったようだけど、ここにくる当番が当てられている時はみんな、仕事などせず街に遊びに行っているようだ。

 いつの頃からか、義母が来て暴力をふるうようになった。義母には子供が出来なかったので周りからの目が気になってストレスが溜まっているようだった。使用人が居ないことにも気づいていたけど、義母は敢えて知らぬふりをしていた。


 

 第一王子である兄は、次期王として大切に、大切に育てられていたし、妹のエリザベスは聖女だった母にそっくりらしいから、聖女の力はエリザベスに発動するとみんなが思ってる。義母も聖女に嫌われるのはまずいと思っているのか妹にはかなり気を使っているようだった。


 でも私が10歳の時、庭で1人で遊んでいた時に庭の池から急に妖精が大量に飛び出してきた。私はその時はびびり倒して気絶寸前だったけど、その妖精の中の1人と目が合った。


『あ! やっと見えるようになったの!』


 目があった妖精はそう言った。それを皮切りに他の妖精達もこっちを見てはしゃぎ出した。


『遅いよ! 寂しかったー』

『これでやっと遊べるね!』

『待ちくたびれた! 待ちくたびれた!』


 妖精達は私の頭の周りを飛びながらキャッキャと楽しんでいる。


「え……妖精、さん?」

『そうだよー!』

「……妖精さんは聖女様にしか見えない、のでは?」


『うん! だからロイアナにしか見えないよ!』

『そうそう! ロイアナが聖女様だよ!』

『何して遊ぶ? 何して遊ぶ?』


「遊び方を、何も知らないの。教えてくれる?」


 私はこの時初めて、目が合うという感覚を知ったと思う。



 私の住む離宮は王宮と少し離れているけど、庭に出て遊んでいる妹を遠すぎて豆粒くらいの大きさだけどたまに部屋から見ることがあった。妹だけの時もあったし、父王と義母と兄と妹の4人で散歩しているのも見ることがあった。そんな時、私の心臓は痛いほどに締め付けられた。


 ある日、父王から呼び出された。


「お前も、もう16か」

「はい」


 父王は、私の年齢を覚えているわけではない。エリザベスの年齢=私の年齢だから、忘れようにも忘れられない、それだけだ。


「もう、お前が聖女になることはおそらく無いであろうな」

「……はい」


 私は、聖女になったことを全ての人に隠していた。いつか愛してくれるのではないかと浅はかにも考えてしまっていた。聖女だと言ったところで私の話など信じてもらえるかは分からないけど、それでも言い出せなかったのは聖女かそうじゃ無いかではなく自分を見て欲しかったからだ。

 

「お前をコールライト帝国の皇太子に嫁がせることにした。明日の朝までに荷物をまとめて発つように」

「……仰せのままに」


 私は父王の目をしっかりと見据えて返事をした。

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