第11話
「・・・・・さま・・・・勇者さまっ!!!!大丈夫ですかっ!?!?」
涙を堪えたリアの声が耳に入ってくる。
「あ、あぁ」
1,2分の間、意識がなくなっていたようだが、いつの間にか頭痛は消えていた・・・。
・・・今のがなんだったのか分からないが、原因はおそらくこの左腕のせいだろう。俺と同じように何かに対して恨みを持ってる声だった。
ぐぅぅぅぅ~~~。
「ん?なんだ今の音?」
頭痛の原因である左腕を眺めながらさっきの声を思い浮辺ていると、横から愉快な音が響いてきた。
音がした方を見るとリアが顔を真っ赤にしながらお腹を押さえていた。
「・・・っ!!!わ、私じゃないですっ!!」
「・・・まだ何も言ってないし、なんで嘘なんてつくんだ。」
「嘘じゃありませんっ!!!」
「・・・・・あー」
「ち・が・い・ま・すっ!!!!!!!」
「分かった、分かった。・・・・・俺も腹が減ったし、何か食えるものを探しに行くか。」
「俺も?」
「・・・・・俺がだった・・・間違えた」
「そうですよね!腹が減ってしまっていては何事もできませんからねっ!勇者さまが決めたことであれば私もお供しますっ!!!」
ドスがきいた声もすっかり機嫌が治ったようで満面の笑みで同意してきた・・・。
そんなにお腹が空いてるなんで嘘をつくんだ?俺はそんな疑問が頭の片隅に残ったまま、食材を探しに出た。
===
しかし、食材を探しに行く前に一つだけやることがある。
「・・・返す。」
俺は、怪物の死体の近くに落ちている二本の刀をリアに放った。
「・・・えっ!?い、いいんですかっ!?」
「あぁ。」
先程の怪物との戦いに大活躍し、信用を得る代わりに受け取った刀を俺は二本ともリアに返した。別にリアのすべてを信用したわけではない。ただ、俺が持っているよりもリアが持っている方が役に立つと判断しただけの話。
「あ、ありがとうございますっ!・・・・・でも、一本は勇者さまが持っていてください。これから何が起こるか未知数です。先程のような怪物がまた現れるかもしれません。」
「・・・分かった。大事に使わせてもらう。」
「はいっ!!!」
===
それから、何十日が経過したか分からないが、リアの言う通り、ネズミのような魔獣やゴキブリのような魔獣、セミのような魔獣など普通よりも一回りも二回りもでかい魔獣が数多く出てきては襲ってきた。それらをすべてリアは一人で片付けてしまった。それも当然のことで前に出てきたオオカミのような怪物ほど強いわけではなかったからだ。それに、リア曰く、刀が二本だろうが一本だろうが強さに支障はきたさないらしい。
あまり食いたくない奴らばかりだが、生きるためには食わなければならない。俺は、必死な思いで食らっていた。幸いなことに水はリアが持っていたので今の今まで生きていくことができている。
以外にも動物型の魔獣よりも昆虫型の魔獣の方が旨いことなども分かった。動物型の魔獣の肉はドロドロになっているやつが多く、ゾンビみたいな見た目をしている。それに比べ、昆虫型の肉は硬いが少し旨味を感じるのでまだマシだと思う。それでもやはり火は通したいと思ってしまう。それでもそんなことなどお構いなしに食っている奴もいるんだが・・・・。
「しかし、よく火も通さずに食えるな・・・。」
「そうですか?でも美味しいですし、勇者さまも食べているではありませんか」
「それは生きるためだからだ。」
「私だって、生きるために決まってますよっ!!!」
それにしては旨そうになんでも食う・・・。俺だって、今は食えているが、最初は食うのにも抵抗感があったし、食えても数時間後には嘔吐や腹痛などの激しい痛みに襲われた。しかし、そのたびリアに常備している苦い変な薬を飲ませられたりして今では胃もだいぶ慣れてきたようで普通に食えるようになってきた。
それが嬉しかったり悲しかったりもする・・・。
「でもさすがに味に変化が欲しいですし、元々持っていた水ももう尽きてしまいましたので、どうにかして見つけていきたいですね。焼けば味は変わるでしょうか・・・。」
「あ、あぁ」
何故かリアの中でここから脱出するよりも食材への探求心の方がメインになってきている気がする・・・。
「あっ!そういえば私、勇者さまが痛みに悶えているときに面白い鉱石を発見しました。」
リアは何かを思い出したかように口にした。
「面白い鉱石?」
俺が、激痛と闘っているときになにしてるんだコイツ・・・。
「はい、これですっ!」
リアは自信ありげに手のひらを見せてきた。そこには面白い鉱石と思われる鉱石が乗っている。しかし、見たところ別に普通の石と変わったところはなく、何の変哲もない鉱石だった。色は黒く、炭のような見た目だ。
「何が面白いんだ?」
「これは、
「あぁ」
リアは、手のひらにある鉱石を握りしめ、軽く鉱石を放った。
すると放られた鉱石は、ボッ!!と軽く音を立てると、次の瞬間激しく燃え始めた。
「・・・・・・・。」
「どうですかっ!?これは空気との一定の摩擦力をかけることによって炎が燃え上がる石なんですっ!・・・・・・って、あれ?」
興奮気味に説明しているリアは、豊満な胸をそらせドヤ顔をしている・・・。しかし、俺が思ったより、薄い反応をしていることに戸惑っているようだ。俺の反応は至極当然のことだ。なんせ―――――――――
「なんで、お前火をつけれるものがあるのにも今まで出さなかったんだ。俺は何回も火を通して肉を食いたいって言ってたよな?」
「・・・・・あっ」
「まさか、忘れてたとかじゃないよな・・・。」
「・・・いや、そんな・・・ことは・・・」
リアの顔はみるみる青ざめていき冷や汗が滝のように出てきている。焦っているのは目に見えて分かった。完全に忘れているやつの反応だった。
「俺が、あんなにも激痛に襲われていたのにも関わらず、お前は忘れていたと・・・」
地面に落ちた鉱石は、俺の怒りに呼応するようにさらに激しく燃えている。
「あっ・・・・・あっ・・・・・すみませんでしたっーーーーーーー!!!!!!」
リアは俺に向かって全力で土下座をし、謝ってきた。
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