第10話
「ということがありまして・・・なので・・・」
ここに来るまでのことを語り終えたリアは恐る恐る自分の左手首の手甲にある糸をたどってみる。すると糸は上へは続いておらず、俺も話を聞いて今初めて気づいたが、すべて怪物に絡みついていた。
あれだけ、怪物に対して攻撃を与えていたら当然と言えば当然だろう。そしてここに糸があるということは鑑定師や騎士団たちは馬車から糸を解いたのは確定と言ってもいいだろう。リアが手甲に手をかざすと糸は自動的に戻っていった。
「・・・話を戻すが、やってくれるんだろ」
「・・・あまりやりたくありませんが、約束ですので・・・」
リアは少し不満そうに、俺が右手に持っている怪物の前足を受け取った。
「でも、結合してもまずは地上に戻ることが可能かどうか・・・・」
「俺は、地上に戻るぞ。やることがあるしな。」
「確かに、一刻も早く戻らなければいつまた20年前の被害を繰り返してしまうことになってしまいますからね・・・。」
「なに言ってんだ?」
「え?」
予想外の返答にリアは戸惑いをみせた。
「俺が地上に戻る理由は、俺を裏切ったやつらを殺すためだ。・・・・裏切りは絶対に許さない・・・。」
「・・・っ!?お、王を殺すんですか!?」
「あぁ。」
「な、なりません!確かに、勇者さまの気持ちは理解したつもりですっ!しかし、王を殺してしまえば、都市だけでなく国の混乱につながりますっ!!混乱だけで済めばまだいい方ですっ。今の王であるシャルライト王は王妃を娶ることも拒んだため、息子である王子がおらず、王自体、元々騎士団からの成り上がりで王になった人物、そのため、王にご兄弟がいたとしてもその方が王になるのは難しい・・・。なので、王位継承は今もなお議論が続いております・・・。せめて、王の天職を持つ家計が存命していればよかったのですが・・・。」
「・・・王が、騎士団にいたという噂は本当だったのか・・・。」
「は、はい・・・。」
「それにしてもお前、よく知ってるな。」
「諜報は得意なので・・・。それに私、昔から知りたいと思った情報は調べ上げてしまう癖がありまして・・・。ですから、何卒、王を殺すことだけは・・・せめて王位継承者が現れるまでは・・・・・。」
「・・・・・それはいつだ。今か、それとも10年後20年後か。俺は、もう殺されかけた時に殺すと決めたんだ・・・。今更変えるつもりもないし、今の俺は復讐に生かされてるんだ。嫌なら、おさらばだ。地上に戻ってから王の下にでも帰るんだな。」
「・・・・・・・・・。」
リアはいくつもの情報を開示し、俺を止めようとしたが俺の意志は固く、変わることはない・・・。二人の間に初めて静寂の時間が流れた。
少しの間、うつむいていたが答えが出たのか俺と目を合わせてきた。
「・・・いえ、私は、どこにも帰りません。私だって勇者さまを守るためにこれまで腕を磨いてきました。ですから、勇者さまの意志がここまで硬くなっているのであれば私は勇者さまのお側でお守りしたいです。それに帰ったところで私は、命令違反や死んだことにされていることでしょう・・・。」
「・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・ダメ、ですか?」
「いや、それが自分で決めたことだろ。だったらそれに従えばいい・・・俺がとやかく言うことじゃない。」
「はいっ!!私、リア=アレクサンドラはこれからもずっと勇者さまを守っていけるよう精進していきます。」
守っていくことを宣言したリアは、決心を示すかのように手のひらが黄色く光り始めた。俺の左腕と怪物の前足を結合し始めたようだ。
「第一の固有スキル発動:
===
「ど、どうでしょうか・・・。」
それから1時間くらいが経ち、俺の左腕と怪物の足は、筋肉、血管、骨、神経としっかりと結合されていった。傷口などの怪我は一瞬で治せるようだが、ましてや人間と人間以外の生物の結合なんてやったことがなかったために時間が掛かってしまったらしい。しかもどうやら、大きさも俺の腕に合わせてくれたようだ。
「今のところは、体には何も変化はない。強いて言えば、この毛皮と獣臭がやっぱり落ち着かないな・・・。」
「そうですか・・・。それくらいならいずれ慣れてくるでしょう。よかったです。」
ドクンッ!!!!
「・・・ん?・・・・くっ!!!がっ!!な、なんだこれっ!?!?あ、頭が、、、頭が割れるっ!?!?!?」
安心したのもつかの間、心臓が大きく跳ねたと思った瞬間、頭が割れるような激痛が襲ってきた。
(殺す、、、、、僕、、、お前、、、殺すっ!!!!!!絶対っ!!!!!!)
激痛とともに頭の中に殺気と哀愁を含んだたどたどしい言葉が流れ込んで来る。
「なんだ、、、これっ!?誰、だっ!?!?」
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