第8話
「奴からは何も聞かされてないのか?」
「や、奴??」
「あーー、シャルライト王のことだ・・・。」
「お、王ですか?・・・王からは何故か今日だけは勇者さまの元に行かなくていいと言われました。」
「そうか・・・。」
「王がどうかしたんですか?」
「・・・王のせいだよ。俺がこんなことになっているのは」
「えっ!?!?ど、どういうことですかっ!?!?」
思い出したくないこれまでのことを思い出しながら嘘偽りなくすべてのことをリアに話していった。
「・・・・・・・。」
俺が話している間、聞くことに集中しているせいかずっと無言だったが、話し終わってもずっと無言ままだ。
「どうし・・・」
「あのっ!!!クソ野郎どもっ!!!!!!!!!!」
「・・・・・っ!!!」
話し終わった後もずっと無言だったことが気にかかり、話しかけようとするとリアはいきなり女性が発しないような怒号があたりに響き渡った。同情でもしているのかと思っていたがまさか怒鳴るなんて思わなかったためさすがに驚いてしまった。
てかコイツ、俺よりも口悪くないか・・・?
「び、びっくりした。なんだいきなり、どうした」
「騎士団はともかく、まさかっ!まさかっ!あの王が主犯だったなんてっ!!!」
「あ、あぁ」
「王はなにを考えていらっしゃるのでしょうかっ!?勇者さまがいなければ霊獣どもにどう対抗していくのでしょうっ!?」
「・・・さぁな、奴も王の端くれだ。なにか考えでもあるんだろ。」
霊獣、不定期に現れては人々や魔獣を襲うこの世の天敵とも呼ばれる存在。20年前に現れどこかの都市が壊滅したのは誰もが知ることだった。その前に現れたのはその3年前、その時は俺の先代である勇者が霊獣どもを退けたという。霊獣には攻撃は効かず当てることさえもできないという謎な存在。そんな存在にも攻撃を与えることができる存在もいる。それこそが勇者だ。
「確かに、今までおかしな点はいくつもありました。でも信じたくなかったです・・・。けれど今、勇者さまに真実を聞かされすべて納得しました。」
「俺の話を信じるのか?」
「当たり前ですっ!!!」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・勇者さま、私は勇者さまだから信じるのではありませんよ。」
リアは俺の不信感に気づいたかのように話し始めてた。
「じゃあ、なんで信じるんだ?」
「私はあなたがアクリール=ベイン様だから信じているんです。」
「・・・っ!!!お前に俺の何がわかるんだっ!!!」
ここに来るまでの間、いろんな奴らに裏切られた。信用するなんてものは言葉だけの上っ面なものだ。俺だってそうだ。まだ全然、コイツのことを信用できる気がしない・・・。そんな中で、リア一人だけが俺を信じているなんて俺には到底思えなかった。
でも、リアは違ったらしい・・・。
「分かりますよ。だって私は今までずっと勇者さまを見ていたんですから。最初は全然乗り気じゃなかったことも・・・・やる気が出てからはお母さんだけでなくみんなのために努力してきたことも・・・・自分にも用事があるのに困っている人を放っておけない優しい心をお持ちなことも・・・・そこらの内面を見ず、外側だけを見て情報を知った
「・・・・・・・。」
初めてだ。母さん以外にも俺のことをここまで知ってくれようとした人は・・・。
「・・・・・ん?てことは俺がそんな小さいときから俺のことを護衛してたのか?城から家に帰るときとかもずっとか・・・?」
「はい、ちなみに城の中でもずっと後ろから護衛してましたよ?・・・でも、すみませんっ!!!王から行くなと言われた手前、馬を使えず走って来たためここに来るまで時間がかかり遅れてしまいましたっ」
・・・確かに嬉しい、素直に嬉しいという気持ちはあるんだが、さすがにそこまで護衛されていると思わなかっただけに少し複雑な気分だ・・・。
俺の私生活、筒抜けじゃないか?・・・全然、気づかなかった・・・忍の天職怖すぎだろ・・・。やっぱりコイツ結構いろんな意味でやばすぎて信用できないかも。
「・・・そうか。走って来たにしてはここに付くまで早かったな・・・。」
そんな動揺などは顔には出さず威厳を保ちながら会話を続けた。
「はい、途中で騎士団とすれ違ったので・・・・・・あぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
「な、なんだよっ今度はっ!!!」
2度目の大声、むしろさっきの怒号よりも大きいのではないかと思わせるくらいの大声だ。
「じ、実は・・・・・終わったかもしれません、私たち・・・。」
「・・・は?」
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