第7話
「こんな傷だらけで・・・・・・流石です!!!勇者さまっ!!!」
リアは、俺の力を否定せず素直にほめてくれている。
「はぁ、お前は何を勘違いしてるか分からないが、さすがに二本の刀を同時に投げて怪物まで刀をとどかせる腕力は俺にはないぞ」
「では、もしかしてスキルですか!?!?そんなすごいスキルをお持ちなんて流石です!!!!」
「そんなすごくはない。」
なんせ誰にも認めてもらえなかったんだしな・・・。
「なにをおっしゃいますかっ!!!!一度止められた刀がまたひとりでに動いて攻撃していく。これをすごいと言わず何と言うんでしょう!!!エクセレントですかっ!!グレイトですかっ!!ワンダフルですかっ!!」
「分かった、分かった。」
俺も褒められるとは思っていなかったので少しむずがゆい・・・。
それにしてもスキル:{追い打ち}名前の通り攻撃を与えた相手にさらに攻撃を与える。怪物を睨み付けている間、直感的に追い打ちのスキルが発動した気がした。刀を投げてみると自らが意志を持っているかのように怪物の方へ飛んでいき、殺した。使い様によっては強いスキルだ・・・。
「・・・そんなことよりも、お前って物質と物質を組み合わせることができるよな?」
「よ、よく分かりましたね!?!?」
「それくらいわかる。・・・お前、錬金術師だろ。」
「・・・・っ!!!回復師だとは思はなかったのですか」
まさか鑑定師でもない俺に自分の天職を当てられると思っていなかったのか驚いている。
「確かに、最初、手当てする手当てするって言っていた時はコイツは回復師か?とも思っていたがいざ治療されてみれば俺の失われた左腕と左目は復元できなかったからな。」
回復師、勇者とは比べられないが勇者以外のほかの天職よりは希少性が高く、500万人に一人の確立と言われるくらい希少性が高い。回復師はどんな怪我や病気も一瞬で治してしまう。不治の病であっても、人体に欠損があってもこれらすべてを治す。だから、王族は勇者と同じく、回復師の天職を持つ者が現れると即座に王宮に入れ、英才教育していく。勇者よりも待遇がいいような気もする・・・・。カイロット城にも一人、俺と同じ年の子が回復師の天職を示されていたはずだ・・・。
しかし、一つだけ引っかかることがある。それは、なぜ錬金術師のリアが勇者護衛部隊、しかもその隊長をしているのか。錬金術師は通常ならそこまで希少性はなく、普通なら下町で主に武器や薬品の錬成をしているはずだ。だから決して、勇者護衛部隊に入れるとも思えない。護衛部隊に所属しているのは皆、忍の天職を持つ者たちだけだったはず。忍びは隠密性の固有スキルを持っているため、護衛や諜報などに重きを置いている。とすると理由は一つ――――――――――――――
「・・・お前ツワイサーだな。」
「・・・っ!!!!!!」
「図星か。」
「・・・はい、私は錬金術師と忍の二つの天職を持つツワイサーです。」
本日何回目かの驚きとともにツワイサーであることを伝えてきた。通常は一つしか持たないはずの天職が二つ持って生まれてくる者たち・・・これらの人をツワイサーと呼ぶ。これも希少性がかなり高い。
確かに、ツワイサーにしてあの実力。だから、俺とあまり年が変わらない割に勇者護衛部隊の隊長をやっているのか。
「話が逸れたが、錬金術師の天職を持つお前なら物質と物質を組み合わせることが可能だよな。」
「出来ますが、何をなさるのですか?」
リアはまだピンと来ておらず、頭の上に??を浮かべていたが俺はかまわず、先ほど倒した怪物の方まで近寄り、右手を怪物に触れる。
「スキル発動:解体」
スキルの名前を呼ぶと、それに応えるように怪物は前足、後ろ足、胴、頭と分解されていく。
「あの巨体を一瞬で・・・」
「薄々、気づいていたが、やはり、死んだ生物しか解体できないようだな」
先程、怪物に触て使っても効果がなかったのはそのためのようだ。なんとも使いどころが分からないスキルだ・・・。だが、今は役に立つ。
「コイツの足を俺の左腕にする。」
「ほ、本気ですかっ!?!?」
「あぁ、左腕がないだけでも結構不便だしな。」
「で、でも、魔物の足を腕にするなんて・・・そんな、拒絶反応が起こるレベルではないと思いますっ!!!危険ですっ!!!」
リアは、俺があまりにも危険で突拍子のないことを言うので咄嗟に止めてきた。
「お前は、俺を信用してるんじゃなかったのか」
「は、はい・・・・・」
信用、この言葉を出すとやはりリアはこれ以上反対してこないらしい。これは利用できそうだ。コイツもいつ裏切るか分からない。それにしてもなんでコイツは俺の信用をそんなに得たいのか意味不明だ。
「・・・でも一つだけ教えてほしいことがあります。」
「なんだ?」
「なんで勇者さまはこんな谷底にいるんですか?」
「・・・・・・薄々思っていたけどお前、本当に何も知らないんだな・・・」
リアは単純に聞きたいだけのようだったが、さすがの俺も少しだけ呆れてしまった。
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