さて、どうしましょう~

「いや、今すぐにでも戻りたいんだが」

 口火を切ったのは柿川。

「仕事の途中でこんなことになってしまった。戻らなければ」

「ああ、あなたが狭間のパドマル……仮パドマルと呼びましょうか。 その具現化の助けをしてくれた方ですね」

 スリヤがうやうやしく、といった風情でお辞儀をする。、

「厳密に言うと違うんだが……。まさか自分たちが作ったと思っていた世界が実在していたとはね」

 柿川が苦笑いした。

「ってことは、ぼくは3年前に誕生したってわけじゃないんだね」

 マルシーンが言った。

「もちろんです。この世界はこの世界なりに古来から存在していたわけですから」

 柿川の「戻りたい」という意思にシャイラも賛同した。

 僕はというと、答えを保留することにした。ふたりは少し怪訝そうだったが。

「そういえば、僕たちはゲームでの姿なのに、なんで柿Pはスーツなんだ?」

「あなた方が仮パドマルからこぼれ落ちたのに対し、彼は直接ここへきた、それだけのことです」

 それだけ、かぁ。あれ、仮パドマルって今機能停止中なんじゃ……。

 スリヤたちにとってそれって困るんじゃないのかな。

 僕はそう思い、尋ねてみた。

「ああ、それならもう少し経てばなんとかなるかと思います」

「え、私はここにいるんだが。戻らないとなんともできないぞ」

 柿川が答える。

「あなた方は、この『パドマル』に迷い込んだ意識の欠片。そういう意味ではあなた方も『仮』といっていいでしょう。元の世界のあなた方は、それに気づかず暮らしていますよ」

 つまるところ、僕たちが見ていた夢は、実際に元の世界の僕たちが暮らしている風景だということらしい。

 そして柿川もまた、元の世界に本体があるということだ。


 僕はなんとなく、それならもういいと思ったのだが、ふたりの「戻りたい」という意思は強かった。

 そりゃあ確かにそうだ。自分自身が「仮」であるなんてぞっとしない。


「お気持ち、承りました。それならばあなた方には『鍵』を探していただくことになります」

 スリヤは静かに言った。

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