戻りたいですか?

 街へ向けて森を歩く。

 柿川は「どうしたものだろうか」などとぶつぶつとつぶやいていた。

「どうしたものかって言ってもねぇ……どうしようもないんじゃない?」

 マルシーンが柿川に言った。

「いや、どうにかして元の世界に戻らないと……」

「そういえば君たちは『元の世界』に戻らなくていいの?」

 マルシーンは今度は僕とシャイラに向けて問いかけた。

「あたしは戻りたいです。 すっごく! いろいろと不便なんです!」

「色々って??」

「お風呂も不便だし! トイレも使いにくいし! いやなんです」

「あ、君たちの世界では、その辺違うんだね」

 この世界を「嫌だ」と言ったことにハラハラしたが、マルシーンは特に気にしない様子だった。

「で、マモルはどうなんだ?」

 僕は。どうなんだろう。

 戻りたいんだろうか。あの世界に。

 高校を卒業して進学したものの、新しく広がった「世界」に戸惑うことも多く、いつしか部屋に引きこもることが多くなった。

 外に出るのは週に3回のアルバイトのときだけ。

 学校はサボタージュを続けていた。

 なんとなく、で始めた「パドマル」に僕は居場所を見つけた。

 

 あの世界に。僕は未練はあるのだろうか。

 それすら分からない。

「僕は……」

 そう話し始めた瞬間、背後でパーンッと大きな音が鳴った。

 僕たちが振り向くと、そこにはひとりの少女が立っていた。

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