やっとできたのです

 気を取り直して再び特訓。


 空を見上げた。絢爛けんらんと輝く太陽。

 かざした手に暖かく届くエナジー。

 これは本当に「作り物の世界」なのだろうか。


 杖を大地に向けて集中する。

 ふと。

 大地からなにかを感じた。


 僕の足元のずっと下。

 そこにあるマントル。

 熱い熱いエナジー。


 風が頬を撫でる。

 花の香りがしたような、そんな気がした。

 花々。木々。そして人々。

 

 それらを産み出した、

 空から降り注ぐエナジー。

 大地に眠るエナジー。


 ああ、これは。

 これは優しさだ。

 僕の語彙ではそれしか浮かばないけれど。


 そう思った瞬間、手のひらが熱くなり、光が浮かんでポッと消えた。

「それ! それだよ」

 マルシーンが叫ぶ。ああ、これか。

「流石『全ステ振り』なだけあるね、イメージ力が上手いよ」

 褒められるとなんだかくすぐったい。こんな感覚は久しぶりだ。ゲームの中では「強い」と称賛されていた。

 今はただ、光を産み出しただけ。

 それだけなのになんだか嬉しい。


 シャイラがにっこり笑って手を叩いた。 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る