お世話になりました!

「ところで」

 シャイラは僕とマルシーンを見て言った。

「こんなとこでなにしてるんですか?」

「魔法の練習」

 僕は答える。

「えー、マモルさん、すごく強いじゃないですかー」

「『すごく強い』のが問題なんだよね、この人の場合」

 マルシーンが手にした杖で僕を指した。

「ステ振りとかー、すごいじゃないですか」

「君もそれ言うんだね、なんかほんとによく分かんないなぁ」

 マルシーンは苦笑いした。

「ステータスっていうのがあるんだよ」

「やめやめ、その話、訳分かんないから。とにかく練習しろ。な?」

 「な?」の声にどこか怒気どきを感じる。


 昨日と同じように練習。少しずつコツが分かってきたような気もする。

「そういや君、教会の仕事はいいの?」

 いつの間にか座り込んで見学しているシャイラにマルシーンが聞いた。

「『お世話になりました』って手紙置いて出てきちゃいました」

「「えええええええええ」」

 思わず声を揃える僕たち。

「お祈りとか、跪いて足が痛いですし~」

 クレリックの回復スキルって信仰度が上がっていかないと使えなかったような……。

 いや、この世界だとそれは関係ないのか?

「本当にもう、君たちって……」

 マルシーンが頭を抱える。

「いいか、僕は! 頼まれた範囲しか手伝わないぞ、ふたりでなんとかやっていってくれよ!」


 ふたりで……なんとかするしかないんだろうが。

 これ、また増えたりなんかしない……よな?

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