謎(バグ)取りがクセでして
クワハラ達の
カイマ達は昨日今日の手応えだと1体は人間3人分くらいの強さだった。
記録更新のチャンス、なんて余裕はなかった。場合によっては数百の群れを相手をしなくてはならないのだ。
「みんな、こっちだ。念のために逃げ道を用意しておいた」
ユーリの言葉に、全員が反応して走り出した。
アイルァとローレルを庇うため、クワハラとダーガは
「ダーガ、適当なところで足止めするぞ」
「オレもそう思ってた」
「ユーリ、アイルァ達を頼む。俺達は足止めをする」
「わかった」
「いやぁ、ダーガ、残らないでぇぇ」
「アイルァ、心配するな、必ず助けてやるからな」
戻ろうとするアイルァの腕を引っ張りながら、ユーリとローレルは先を急ぎ逃げていく。
「この辺りでいいか。ダーガ、約束は守ってやれよ」
「はっ、当たり前だ」
森の中の獣道を使い逃げていたクワハラ達は、いちばん細くなっているところで、待ちかまえた。
一昨日は3体、昨夜は5体。30体いちどは無理だが、ここなら2~3体ずつでやれる。
追いついたカイマ達との戦いが始まった。
2体、4体、6体、順調に倒し続ける。しかし、妙な事が起こっていた。
「ダーガ、そろそろ下がるぞ」
「わかってる、けど、くそっ、コイツら何でオレにばかり襲ってくるんだっ」
「ダーガ」
「う、うわあああ」
「ダーガっ!!」
「クワハラ、戻ったぞ。アイルァ達は無事逃がした」
「ユーリ、ダメだ来るな、まだカイマが」
走って戻って来たユーリが、少し遠いところで、仁王立ちとなりマントをはだけ、白く美しい裸身をさらけだす。
「カイマども、こっちだ、お前達の求める女はこっちだぞ」
クワハラとダーガを襲っていたカイマ達は、ユーリに気づき凄い勢いで向かっていった。ユーリはすぐに逃げ出す。
「クワハラ、村で落ち合おう」
「待て、ユーリ」
生き残ったカイマはすべてユーリを追いかけていった。
「ダーガ……」
還らぬ人となった戦士に、クワハラは力無く話しかけた。
──夜が明けて、クワハラは村に戻る。男はすべて殺されて、女の姿は1人としていない、凄惨たる跡に言葉が無かった。
少しして、ユーリがアイルァ達と共にやってくる。
ダーガの事を告げるとアイルァは泣き崩れた。
「……アイルァ達を先に馬で逃したあと、私はクワハラ達のところに戻った。その際、奴らは匂いで感じていると思ったから、あらかじめマント以外の衣服を馬にくくりつけ、囮として森の中を逃げた。そして下調べしておいた沼までくると、馬から飛び降り沼に飛び込み潜って、馬を追いかけるカイマ達をやり過ごして逃げたんだ」
「カイマ達は、なんでダーガばかり襲ったんだい」
オレが訊くと、
「ダーガとアイルァはデキていたからな、アイルァの匂いが付いていたのだろう。それで狙われたと思う」
「それで」
「パーティーはその場で解散して、アイルァとローレルはダーガの遺品を持って、生まれ故郷に帰っていった。私とクワハラは他の村に被害を増やさない為に西へ進み、途中途中の村々に声をかけて避難させた。そうやって生き残った村人達とクワハラによってこの地に創られたのが、カーキ=ツバタの国という訳だ」
「ユーリはどうしたの」
「半年くらい国造りにつきあったのだが、建国は私の目的では無いからな。カイマ達も繁殖期が終わったらしく来なくなった。いくらか調べたが得るものが無かったから旅に出た。だからその後のカーキ=ツバタの事は、たまに風の便りで知るくらいだな」
ユーリの昔話を黙って聴いていたエルザ女王とゾフィは、少し考えてから話す。
「わが国にはこう伝わっています。
地の底より災厄が現れて 我々の祖先が襲われたが 勇者一行があらわれて これを追い返す
勇者は生き残った祖先を率いてこの地にやってきて 国を造った 今日の繁栄のはじまりである
だが心せよ 災厄は カイマは100年のちにやってくる
と」
エルザ女王の言葉を繋いでゾフィが話す。
「100年前の事であり、多少の事実のずれは許すが、腑に落ちない事がいくつかある」
「地底の民であるカイマが何故飛んできたか
日の光が苦手なら何故昼前にやってきたのか
違う種族がいるのなら苦手なら地上より地底の別種族を狙わないのか」
オレが急に口を挟んだので、皆に注目されてしまった。
「すいません、疑問を感じるとつい口にしてしまうもので」
前世はシステムエンジニアとしてデバッグばかりしていたので、
「その通りだ。つけ加えるのなら、
言いたい事を取られたけど、それだけじゃないぞとばかりに、ゾフィはオレにドヤ顔をした。
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