第42話 恐怖の時間

「屋…。」話し出した瞬間に携帯を取られ柵の方に行くとそこから携帯を遠くに投げた。目の前に岡崎成美が立っていた。痛さで感が働かなかった。


「おく…?屋上?」森田君の部屋に行くと床に血が流れていた。新井刑事が看護師に尋ねると入れ違いに女の子が出て行ったと言っていた。多分、吉森さんか岡崎だろう。床に血の跡が続いている。

「は・や・く吉森さんが…殺される。」びっくりして新井刑事は振り向くと森田君が声を発していた。

「森田君!目が覚めたのね。よかった。」

「俺を…押した…のは岡崎…。」

「わかった。ありがとう。吉森さんは大丈夫だから。」

 新井刑事は急いで病室を出て屋上に駆け上がっていった。血が屋上に向かっている。

「吉森さん待ってて。」


「大倉大丈夫か?病院に着いたらまず診てもらったほうがいいよ。」

「ああ、分かってる。七瀬の無事を確認したら診てもらうよ。」

 タクシーは病院の送迎所のところに順番に下ろすので並んでいた。周りの人が上を見て指をさしている。嫌な予感がした。

「沢井、俺先に降りるから。お金払っておいて。おろして下さい。急いで!」

 ドアが開くと奏は外に飛び出した。足を引きずる…痛い。


「見つけた。逃げられると思った?」

「思ってはいないけど、もう森田君を殺すのを失敗した時点であなたも、もう逃げられないよ。」

「そんな事はわかってる。取り敢えずあんたを殺した後、大倉君は私と一緒に死ぬから。」

「絶対にそんな事はさせない。使えない手で逃げられないでしょ。痛さで体震えてるじゃない。」

「まず最初にあんたが自殺して、森田はまだ目を覚ましていないし、後で殺してしまえばいい。寝てる人を殺すのは簡単だからね。でももう森田はどうでもいいか。」

「刑事さんを呼んでるから、もう逃げることはできないよ。」

 近づいてくる。震えを体に力を入れて立ち上がり身構えた。柵の外に出てしまったのは失敗だった。押されたらそのまま真下に一直線だ。新井刑事がもう少しで来るだろう。それまで耐え切らないと。

「奏は、私が死んでもあなたとは一緒になんて死ぬわけない。あなたに捕まるような人じゃない。」

「どうかな。今彼は腕と足を怪我したみたいだから逃げられないかもよ。」

「え!何で?」

「私が怪我する様に仕組んだから。」

「なんて酷いことするの!」

「私の心を踏みにじったからそれぐらい当たり前。同じぐらい辛い思いをすればいい。奏君は私がもらうから、あんたはそろそろこの世からいなくなって。」

 リングは赤と金と黒が混ざり光っていた。何て凄い色だろう。でも負けるわけにはいかない。岡崎成美が近づいて七瀬はさらに後ろに下がるしかなかった。もう屋上の隅まで追い詰められていた。

「来ないで。」

「うんって言うわけないでしょ。手痛そうだね。ナイフをこちらに渡して。私の指紋も付いてるし。そのまま落ちて証拠が残っても嫌だから。」

 岡崎成美は七瀬に飛びかかった。そのまま七瀬は倒れ込んだ。抵抗したが手を掴まれ悲鳴をあげた。岡崎成美は七瀬が掴んでいるナイフを奪った。手から血が溢れる。そのまま刺そうとしたので七瀬は岡崎成美を蹴り上げた。その拍子にナイフが手から落ちた。ナイフを蹴り遠くへ飛ばしたが、岡崎成美は後ろから七瀬を羽交い締めにして、そのまま突き落とそうとした。塀の高さは腰ぐらいなので力を抜いたら落ちてしまう。その時に新井刑事が現れた。

「岡崎やめなさい!」

 その声に岡崎成美が反応して少し手が緩んだ。岡崎成美を突き飛ばそうと押したが力が足りずさらに押された。

「落ちる…」七瀬はもう体が半分以上出てしまいどうする事も出来なかった。七瀬は力を振り絞り、岡崎成美の服を掴むとそのまま一緒に二人下へ落ちて行った。

「吉森さん!」

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