第40話 沢井君の彼女
奏の人気ぶりを改めて感じた。一緒にいる時は何も起きないが、カルや沢井君と廊下を歩けばワザとぶつかって来られたり、足を引っ掛けられたり、階段から落とされそうになったり、一日中気を張っていなくてはならないから疲れる。だんだんクラスメイトの中で応援してくれている子が守ってくれるようになって来てありがたかった。
とりあえず早く家に帰りたい。毎日のように色々と起きるので、段々疲れて来てしまった。明日の土曜日の練習はもう休みますと言ってあるので伝えてあるので、奏とは会えないが夕方にはご飯を食べる約束をしているから、まあそれまでゆっくり家にいよう。時計を見ると午前九時を回っていた。奏の事を考えてちょっと顔が熱ってしまった。私何考えてんだか!恥ずかしくなった。親はもう仕事に出ていて一人なので、パジャマのまま外に出て庭のウッドデッキで少し遅い朝食を作り食べていた。食べ終わるあたりで電話が鳴った。
「奏かと思いすぐに電話を取ると沢井君だった。
「どうしたの?電話なんて珍しいね。」
「吉森さん、森田が目を覚ましたって!」
「え、本当に!」
「俺の彼女が先生達の会話をたまたま聞いたんだって。大倉は先生に聞いてもう行っているみたいだから、吉森さんに知らせてあげてって言われてさ。」
「う、うん。わかった。急いで行く。初耳だけど、沢井君彼女いたんだね。」
「あ、そうなんだ。言うタイミング逃しちゃって実はそうなんだ。俺もさ、部活終わったら行きたいから病院教えてよ。」
「そっか知らないもんね。白川医大病院だよ。でも沢井君以外言わないでね。」
「内緒なんだね。わかったよ。じゃあ後で。」
「うん。今度彼女紹介してね。」
良かった!目を覚ましたんだ!本当に助かって良かった。奏も嬉しいだろうな。着替えて早く行こう。お花は病院で買えばいいよね。急いで家を出ると自転車で病院に向かった。そうだ行くついでに野村さんのお見舞いもしてこよう。ついでって言ったら失礼か…お菓子はいっぱい買って行こう。
お菓子を買うのに手間どり少し遅くなってしまった。病院に着くと受付に行き名前を記入して部屋番号を教えてもらい入館証をもらった。さすがに土曜日の午前中だけあって人がいっぱいだ。七階のフロアーに着くと森田君の病室へ向かった。花も奮発して少し大きいものを買ったのでお菓子と花で手が塞がってしまった。部屋の前まで来るとふうっと息を吐いてノックをした。あれ?なんの反応もない。そおっとドアを開けてみた。人は誰もいなく森田君が管をつけて静かに寝ている。大倉君はどこ行ったんだろう。なんで誰もいないのだろう。今日、目が覚めた訳ではないのかな?今日だったら人いっぱいいるよね。とりあえず花瓶があったのでそれを持って水道を探しに部屋を出た。
沢井は七瀬と電話を切ると、横で話を聞いていた彼女に「白川医大だって」っと話しをしていた。
「教えてくれてありがとね。吉森さん喜んでたよ。大倉には知らせてくれたんだよね?」
「うん、知らせたよ。私バレー部に知り合いがいるから沢井君に知らせる前に先に伝えたんだ。」
「親友だもんな。嬉しいよな。俺も後から行くけどナルちゃんも行く?」
「私はみんなを知らないからいいよ。ひとりで行って来て。じゃあ私帰るね。」
「うん。ワザワザ知らせに来てくれてありがとうね。あ、そうだ。病院の話内緒にしてだって。言わないでね。」
「うん。わかった。」
岡崎成美は沢井と別れると急いで白川医大まで電車で向かった。
沢井はナルと別れると部活へ向かった。沢井はバスケ部なのでバレー部と隣同士だった。今日は大倉はいないからつまんないな。いつもはちょっかいを出しに行くのだが大倉のいないバレー部は興味がないので、諦めて練習に打ち込んでいた。シュート練習が終わり床に座って飲み物を飲んでいた。
「大倉もっと奥に打て!」と声が聞こえた。え、大倉?同じ名前の部員がいるのかと思い、横を見ると大倉がいる!あれ病院は?しばらくするとバレー部が休憩に入ったので大倉の側に行き話しかけた。
「あれ?大倉行かなかったのか?」
「え、どこに?」
「森田が目を覚ましたって聞かなかったか?」
「そうなのか!聞いてないよ。」
「え、知らせたって言ってたんだけど、うまく伝わってなかったのかな。」
「誰がしらせたって?」
「俺の彼女。吉森さんに言っちゃったからバレるだろうから言っとくよ。俺さ、彼女できたんだ。」
「誰?」
「ナルちゃん。」
「ナルちゃん?」
「隣のクラスの岡崎成美ちゃん。」
「え!岡崎が森田が目を覚ましたって言ってたのか?」
「そうだよ。話していたのが聞こえたって。どうしたんだよ血相変えて。」
「大倉には伝えたから、吉森さんに伝えてって言われてさ、吉森さんに病院で大倉が待ってるって言っちゃったよ。」
「岡崎は病院がどこだか知ってるのか!」
「俺も後で行きたいからって吉森さんに聞いたのを伝えたよ。」
「やばい!それは何時の話だ?」
「九時半ぐらいかな。やばいって何が?」
時計を見ると十時半を過ぎていた。
「お前もすぐに病院に来い。」
「え、え、なんで?」
奏はカバンを掴むとジャージのまま学校を飛び出し新井刑事に連絡を入れた。すぐに行ってくれると言っていたが…間に合えばいいけど。嫌な予感がする…七瀬…。
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