第36話 計画
家に着くとカルが門の外で待っていた。
「仲良くお揃いで。待ってたよん。」
「ごめんね。遅くなって。中に入っていれば良かったのに。」
「全然大丈夫。今日さ、七瀬の家に泊まらせて。」
「いいよ。久しぶりだね。嬉しい。」
「明日学校に一緒に行けるね。」
「そうだね。」
「中に入ろう。」
カルに事情を説明した。
「そうなんだ。岡崎成美…怖すぎるね。でももし本当に森田に何かしたのであれば絶対に許せない。そういえば今日全然見かけなかったけど、どうしたんだろうね。」
「そうだな。何か企んでいなければいいけど。この後はどうするんだ?」
「私とおおく…奏が付き合い出した事は知らないはずないから、私に何かしらしてくる可能性はあるから、逆にそれを利用しないと意味がないんだよね。呼び出されたらチャンスなんだけど。もし呼び出されたら刑事さんにも知らせて来てもらって隠れて聞いてもらうとか。いい方法が良く分からなくて。」
「取りあえず早いところ手を打たないと。イライラがつのり過ぎて爆発させたらまずいしね。」
「今はあっちの出方を見ないといけないな。」
「そう言えば大倉は森田の所にお見舞いには行ったの?」
「行ったよ。事件性があるし、場所を知られちゃいけないから二回ぐらいしか行けてないんだけど、今にも目を覚ましそうなんだけどなあいつ。こっちの件が片付いたら頻繁に行くつもり。」
「そうなんだ。聞いても大丈夫?私もお見舞い行きたいんだけど、どこの病院なの?」
「二つ先の鮫島駅の白川医大病院だよ。入院先は俺たち三人と学校関係者しか知らないから多分岡崎にはバレないと思うけどな。」
「あれ?その病院、野村さんの転院先だ。」
岡崎成美は朝、学校へは登校したが奏君が吉森と手をつないで歩いている姿を見てショックを受けそのまま家に帰ってしまった。そのまま学校にいたら自分が何をしでかすか分からなかった。今はダメだ落ち着かなくては。目を閉じても何をしていてもあの光景が焼き付いて離れない。奏君の横に立つのは私のはずだったのに。その為にいっぱい努力したのに。あんな何にも努力もしていない知らない女に取られるなんてありえない。殺意が沸沸と湧き上がる。私を見てくれない奏君も悪いけど、それ以上にあっという間に近づいて心をさらった吉森が許せない。次の日に見間違いだと信じたくて学校へ行った。すぐにファンクラブの子が寄って来て大倉君に彼女が出来たと泣きついて来た。やっぱり本当だったんだ。いつもなら奏君を毎朝見に行くのだが、今日は怒りでそんな気にもなれず、ファンクラブの子達と一緒に泣いた。こんなにひどい思いをさせるなんて吉森…絶対に許さない。成美はどんどんと憎しみが深くなって行った。しばらく様子を影から見ていたが吉森には奏君か百田が必ず一緒にいる。二人で守っているかのように思えた。このままじゃ呼び出す事も出来ない。この所ずっと沢井という男が奏君に張り付いている。あの男使えるだろうか?
「大倉〜。吉森との馴れ初め教えてよ。俺たちの仲じゃん。」
「仲って…そんなに仲良くないだろ。」
「酷いな。その冷たい返事。俺だって吉森さんいいなって思ってたのに大倉に取られたんだぞ。それぐらい教えてくれたっていいじゃないか。」
「ぜってー話さない。」
「どっちから告白したの?」
「だから言わないって言ってるだろ。」
「じゃあ、吉森に聞きにいこう。」
「やめろ、絶対。」
「なんでだよ。吉森さんに聞く分には良いだろ。」
「嫌なんだよ。」
「何が?恥ずかしがるなよ。」
「ちげえよ。俺以外の男と話すのが嫌なんだよ。」
「まじ?大倉お前…可愛いな。」
「うるせぇ。」
後でこっそり聞いてやろ。こんな話ファンが聞いたら絶叫ものだな。
ずっとそばにカルと奏とたまに沢井君がいてくれているので、直接の嫌がらせは取りあえずなかった。でも上履きは一週間で三回は無くなり、机の落書きはほぼ毎日で、油性ペンを消す為にアルコールを持ち歩くようになった。覚悟をしていたとは言え、女子はやっぱり集団だと怖い。沢井君は事情は知らないが、なぜかいつもそばに寄って来て話しかけてくる。何か言いたそうだったがニヤニヤしたままで、なんだかよく分からなかった。もうお金もかかるので上履きは奏の下駄箱に一緒に入れる様にするともう上履きは無くならなかった。嘘だとは言え、奏が優しくて幸せすぎて毎日が雲の上にいるみたいにフワフワしている。でもそんなウキウキはしてはいられない。そろそろ行動を起こさないと。いつ呼び出されるのだろうと待っていたが一向に呼び出しが掛からないので、もう少し様子を見ても何もアクションが起こらなかったら、こちらから呼び出そうと計画した。岡崎さんに付けられて話し合っている所を見られては困るので、オンラインで新井刑事と、カルと、奏、そして私の四人で計画を立てた。今は合わなくても顔を見て会話が出来るから便利だ。
計画としては…公園に呼び出す→奏は私のものだからファンでいるのも辞めてと嫌な態度を取って怒らせる→そして事件の事を上手く聞き出す。場所は変えられてしまっても事前に分かればみんなに伝えれば良いだけだから大丈夫。うまく事件の事を引き出せるかどうかは私次第。一応小型のボイスレコーダーを忍ばせて会話をする。みたいな感じ。ざっくりとしているがその時は、リングを見ながら喋るしかない。
「ねえねえ。沢井君」お昼休みにトイレに行こうとしていたら急に廊下で話しかけられた。
「え、何?俺の事、知ってるの?」
「ちょっと視聴覚室まで一緒に来て。」
「え、う、うん」えっと誰だろう?見たことがある様な気がするんだけどな。元々、人を覚えるのが苦手だからよく分からない。随分と化粧は濃いけど美人だな。最近、大倉と一緒にいるのでよく女子にプレゼント渡してくれとか話しかけられる。本人に渡してと断っているが、そういう子は後を経たない。またかと思ったが呼び出されたのは初めてだった。視聴覚室は誰もいなく静かだった。
「はじめまして私、隣のクラスの岡崎成美って言います。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます