第31話 刑事さんと

 七瀬が家の近くまで来ると、この前、事情聴取に来た女刑事さんが門の前に立っていた。確か新井さんだったっけ。


「こんにちは。どうしたんんですか?」

「あ、吉森さん。丁度インターフォン押そうと思っていた所だったの。良かった会えて。」

 岡崎さんに付けられていたが途中で引き返した姿が自転車のバッグミラーで確認していた。あのまま付けられていて刑事さんが家に来たなんて知ったらそれこそ何かあると勘繰られたかもしれない。

「中へどうぞ。」七瀬は外のウッドデッキに刑事を案内した。

「なんか素敵ね」刑事さんはあたりを見渡している。何もないのでお茶のペットボトルを持って刑事さんに渡した。あ、指輪も外しておこう。

「どうぞ。」

「あ、結構ですよ。お気持ちだけで。」

「暑いですから。どうぞ。」

「じゃあ遠慮なく。」

「今日は一人なんですね。」

「そうね。今日は個人的に来たの。」

「個人的ですか?」刑事さんのリングは白だ。私が何か疑われているとかではないらしい。

「えっとご用件は?」

「野村美幸ちゃんと連絡を取っているんでしょ。」

 さすが刑事さんもう知っているんだ。

「もう分かっているって凄いですね。野村さんが話したんですか?」

「ううん、それはなんとなく思っただけ。実は母親同士が友達で、あの子が自殺するわけないからちゃんと調べろと言われてね。自殺だと警察としてはもう介入できないからね。」

「そうなんですね。刑事の感ってすごいですね。それで聞きたい事って?」

「美幸ちゃんは何の用事だったのかな?」

「それは本人に聞いた方が良いと思いますが。野村さんに聞いて私が話してもいいのであれば話しますけど。メールで聞いてみますか?」

「じゃあお願いしていい?」

 生意気なことを言って、嫌な高校生って思われるかと思ったけど、この刑事さんは白から黄色に変わった。私の印象が良くなるなんて面白い人だ。この人は信用できるかも知れない。

「こんにちは。頼まれてたもの、受け取れた?今、新井さんって言う刑事さんが来ていて、お母さん同士が知り合いらしいけど、野村さんに頼まれた事とか話しても大丈夫?」

 しばらくして「今から状況をお母さんに話すつもりでいるから、どうせバレるからいいよ。大倉君に会えて嬉しかった♪」と返信が来た。

「今、本人に確認したら大丈夫みたいです。」

「そう。じゃあ改めて。知っている事を話してくれる?」

「はい。」

「学校で話した通りで、これと言って新しい話はないんです。でも野村さんに呼ばれて会った時に携帯電話を無くしたから探して欲しいと言われたんです。」

「あれ、本人が川に投げたって言っていなかった?」

「それは嘘だったらしくて、落ちた時にどこかに行ったんじゃないかと。それが見つけられれば岡崎さんを懲らしめられると言ってました。飛び降りても生きられたから怖いものがなくなったみたいで、開き直ってました。」

「で、携帯はあったの?」

「学校に夜、侵入して探して見つけました。」

「一人で!凄いわね。その携帯はどうしたの?まだ持ってる?」

「一人では無くて…あの、同級生と一緒に探して、携帯は今日野村さんに渡しました。」

「同級生って誰?」

「あの…大倉君です。」

「あのイケメン君。揉め事の中心人物じゃない。なんで彼が一緒に?彼氏?」

「違います。彼氏じゃないです。大倉君が野村さんの自殺に絡んでいるのではないかと気にしていたので話しました。そう言う事ペラペラと軽く喋るタイプの人ではないので。そしたら、一緒に探しに行くと言って手伝ってくれました。」

「そうだったのね。取りあえず携帯が本人の手に渡って良かった。じゃあこれからちょっと本人に会ってくるわ。ありがとうね時間とってくれて。」

「あ、いえ。すいません、ちょっと気になる事が。」

「何?」

「あの、野村さんに携帯を届けに行こうと思って学校を出てから、岡崎さんに後を付けられていたみたいです。」

「どう言う事?」

「病院に行く事を知っていたのは大倉君だけで、誰にも喋った覚えは無いんです。大倉君が先に病院に来ていて、後を付けられてると教えてくれました。野村さんは誰にも居場所を知られたくないみたいだったので、二人で入れ替わって私はそのまま帰って、大倉君が届けに行ってくれたんです。そしてしばらくの間、私の後を付けてきていたのですがしばらくしていなくなったんです。でも病院はバレてしまったかも知れません。」

「大倉君は渡す事は出来たのかな?」

「さっきの感じだと、会えて嬉しかったってメールが来ていたから多分もう渡してると思います。」

「なんか怪しいわね。もう一度考えて野村さんの話は大倉君以外に話していない?ちょっとした事でも。」

 しばらく考え込む…そんな話大倉君以外には…あれそう言えば

「昨日バイト先に友達が来て家まで送ってくれたんです。その時に野村さんに少しだけ頼まれごとをしているって言う話を帰りにしました。それ以外の話はしていないです。」

「その友達はもしかして森田君?」

「え、はいそうです。森田君は私を送ってくれた後に、交通事故に合いました…」話していてどんどん背中が寒くなったてくる。それって偶然なのだろうか?

「その時に誰かに付けられてるとか感じなかった?」

「いえ、全然何も…」指輪を身につけている時は感が働かなくなる。外していれば分かっただろうか。

「その子とコンビニの前で立ち話した?」

「いえ、していないです。遅かったのもあるし、そのまままっすぐ帰りました。」

「実はコンビニで目撃情報があって、女の子と口論していた姿を目撃されているの。暗くて顔がよく見えなかったらしくてまだ誰だかは分かっていないのだけど、しばらく口論していていなくなったと思ったら、その後に事故に遭ってるから参考人としてその子を探しているの。その子が岡崎さんだとすると、事故に関係していないとは言えなくなってくるわね。」

 新井刑事は考え込みながら「話聞かせてくれてありがとう」と言って帰って行った。今までこの変な能力が嫌いで封印していたが今からは森田君や野村さんの為にも使わなければいけない。感情を見る事によって全てがわかる訳ではないが質問の仕方によっては気がつくことがあるだろう。本当は岡崎さんと関わりたくなかったが、このままにはしておけない…やるしかない。

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