第7話 友達になりたい

 家に帰ると少し落ち込んだ。また余計な事を言っちゃった。鼻くそとかオナラとか女子なのに何言ってんだろ私。思ったことをそのまま口にして変な子だと思われたかな。悪気はないんだけど女子力がなさすぎる。森田君はこちらが喋りやすい様に話しかけてくれるからありがたい。本当にいい人だ。大倉君のモテ具合は本当に凄い。その内、芸能人とかになるのかな。違う学校の子とかも見にきてるみたいだし、女の私が言うのもおかしいけど部活では守ってあげないと。これもまた余計な事かな?


 森田君が朝、挨拶してくれるのが日課みたいになっている。多少緊張はするが少し普通に話せる様になっていた。でも触られるのは苦手で前に森田君に肩をポンと叩かれて気分が悪くなってしまった。森田君に説明して誤解は解いたがそれ以来、距離を置いてくれる様になったので安心して喋れる。女子の目が怖いので大倉君とは隣の席だがなるべく話さない様にしているのに、わざとなのか意地悪でうつ伏せの状態で小声で話しかけてくる事がたまにあって戸惑う。

「おい、鼻くそ女。」

「えっ。」

「俺の鼻くそほじるの心配してたんだって。」

「あ、森田君から聞いたの?」

「俺は人前でそんな事しないから。」

「あ、そうだよね。ごめん。」

「お前変なやつ」フッと笑ってまたうつ伏せに戻った。一瞬ドキッとした…笑った…。いつも眉間にシワ寄ってる様にムスッとしているのが普通なのでビックリした。

「あいつ何喋ってんだよ。」ちょっとの間だったが喋っている事は分かった。やっぱムカつく。

「どうしたの成美?」

「あの女、同じ部活だからって調子に乗ってるんだよね。」

「ああ、あの地味な子?そんなに心配する事ないでしょ。そんなにパッとしないし。」

「だからムカつくの。あの程度で奏くんと話すなんて、こっちは凄い努力してるのに話も出来ないんだよ。」

「だってマネージャーだからしょうがないんじゃない。別に凄い仲良くしてるわけでもないし。」

「でもなんかムカつくの!私のチャンス邪魔したんだよ。」

「でもわざとぶつかりに行ったんでしょ。それをかばってくれたんだから怒るのも変だけどね。」

「え、紀は誰の味方なの。」

「成美だけど、違うものは違うって言うのも友達でしょ。」

「そうだけど。」

「よくあるじゃん。やきもち焼いて意地悪するやつ。それって絶対意地悪する方が嫌われるからね。とりあえず地道にがんばれ。」

「納得できない!でもライバル多すぎてどうしたら…。」

「同じ委員会に入るとかさ、色々あるじゃん。もう一度マネージャー入れてくれって言うとか。大倉頭いいんでしょ。勉強教えてくれって言うとか。」

「んー、委員会とかいいね。考えてみる」紀、私を否定するなんてムカつく。友達だと思ってたけど、もうやめよう。

 カルは廊下の話を全部聞いていた。聞いていたと言うよりか七瀬の話だって分かったので聞き耳を立てていた。何かあったら文句言ってやろうと思っていたが、意外だったあの成美の友達の紀と言っていたがあの子まともだ。大抵ダメな子の友達って一緒に性格悪かったりするけど、言ってる事が正論だ。確か同じ軽音楽部にいた様な気がする。あの子となら仲良くなれるかも。

 

 カルの周りには男も女も友達が集まる。誰にでも優しくて綺麗なのにそれをあまり感じさせない。部活に入ってから特に男子が喋りにくる様になっていた。カルの横にいるから一緒に話しかけられたりするが、そんなに嫌ではなく、森田君と大倉君より普通なのでまあまあ話せた。

「おい、大倉、俺さ吉森さんにあんなに一生懸命に話しかけてやっと何となく喋る事ができる様になってきたのに、他の奴ら簡単に喋りやがって。俺の毎日の苦労を返せって感じだよ。」

「そんな事、知らねえよ。男が苦手なのが治ってきたんだったら良かったんじゃないのか。そのうち冬夜とも普通に喋れるんじゃねえの。だって喋っててもあれ顔引きつってるだろ。」

「そうだよな。俺は部活も一緒だし。喋る時間多いもんな。でもいい喋るな…吉森さんが可愛いって事気がつかれたら困る。」

「よくわかんねえな。普通じゃん。」

「いいよそれで、俺だけわかればいいから。」


 昼ごはんを食べた後、冬夜が珍しく腹痛で部活不参加で帰ってしまったので一人で部活に向かった。部室で着替えて扉を開けると目の前にワザとボールにぶつかろうとした女が立っていた。

「あの、大倉君。」

「誰?」分かっていたがワザと知らないフリをした。

「え、この前喋ったじゃない。酷いなあ。でもまあいいや。あのさ、もし良ければ友達になりたいんだけど。」

「悪いけど、無理かな。面倒だし。友達って俺と何するつもりでいる?」

「え、カラオケ行ったり、遊びに行ったり、ご飯とか一緒に食べたり。」

「俺の事どう想像してるかわからないけど、俺は無趣味だし、友達になった所で全然面白くないよ。多分誘われても出かけないと思うし。」

「でも、友達になりたいんだもん。喋りたいんだもん。」

「悪い。部活遅れるから行くわ。友達って趣味が合うとかで、何となくなるもんでしょ。あんたと多分共通点ないと思うから。」

「あのマネージャーの吉森さんとは喋ってるよね。」

「部活で一緒だから、そりゃ喋るでしょ。」

「教室でも喋ってるじゃない。」

「え。」

「朝、喋ってるの見たもん。」

「何、なんでそんな事あんたに言われなきゃいけないんだよ。そう言うのやめてもらえる。」

「もしかしたら、私がマネージャーだったかもしれないじゃない。そしたら私と喋ったりしたでしょ。あの子マネージャーとして何か役に立ってる?私がなったって同じじゃん。私もマネージャーにしてほしい。」

「多分、あんたがマネージャーだったら喋ってないよ。いいよ…分かったよ、今日部活見ていくんだろ。今日吉森にやらせる事、あんたが出来るんなら先輩に頼んでやるよ。」

「本当に!分かった見てる。」

 喜んで走って行った。

「本当に意味わかんね。こんな冷たい言う男のどこがいいんだか。あいつもMか?世の中Mが多いのか…。」

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